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16年相場で最も驚いたのは、あの大型株の仕手化

独断と偏見で選ぶサプライズトップ3

岡村 友哉
2016年12月27日
米国ニューヨーク・マンハッタンのセントラルパーク入口の広場でも「ポケモンGO」に興じる人の姿が目立った

 当連載の2016年最終回ということもあり、「16年に驚いたことトップ3」を独断と偏見で選びたいと思う。本当はブレグジット(英国のEU離脱)、マイナス金利、トランプラリーにしたかったが(あと「神の手」とか)、あえてそれ以外でトップ3を挙げてみたい。

 まず、独断と偏見で驚いたこと第3位は……「祝・東証1部銘柄数2000社突破」にしたい。26日時点で内国株式の東証1部銘柄数は2005。上場企業というだけで「社会的信用が高まる」といわれる。その頂点である東証1部銘柄が2000社を超えたわけだ。東証の全上場銘柄数は3544社だが、そのうち半数を超える57%が東証1部銘柄である。信頼と安心の(?)東証1部企業が日本に2000社以上も存在するわけだ。

 15年末の東証1部上場社数は1934銘柄だったため、71社の純増。新規株式公開(IPO)で16年に東証1部銘柄へ加わったのは九州旅客鉄道(JR九州、9142)LINE (3938)など8社で、残りのほとんどは東証2部や東証マザーズ、ジャスダックから鞍替えした企業である。新興株に絞って見ると、16年に東証1部へ市場変更になった銘柄はマザーズが29社、ジャスダックがわずか5社と大きな開きがある。実はここに問題がある。

 東証と大証が統合されてマザーズとジャスダックの垣根は実質的にはないように思うが、東証1部への変更基準に大きな違いがある。いちばんの違いは「時価総額(市場変更時見込み)」だ。マザーズが「時価総額40億円以上」であるのに対し、ジャスダックは「時価総額250億円以上」である。

 “東証1部上場企業”の看板を手に入れるためのハードルは、マザーズを経由するほうが圧倒的に低いのだ。その結果、今年何が起こったか……。極めて利益水準が小さいままで東証1部銘柄になれちゃった、というような超スモール東証1部銘柄が続出したのである。

マザーズ市場の質が劣化

 具体的な社名は挙げないが、15年にマザーズ上場を果たし、上場初年度の純利益がピークで今期は減益予想の企業がある。同企業の今期の純利益予想は2億円にも満たない。だが、「フィンテック関連銘柄」の仲間入りをした結果、時価総額は「40億円以上」の基準を超えていた。

 というようなマザーズ銘柄が「東証1部銘柄です」と名乗ることのできる「肩書き変更」ができてしまえるのだ。これを実現してしまう変更基準に問題があるように思うが、ルールがそうである以上、来年も続出するのだろう。

 これに派生して起きてしまうこともある。「東証マザーズ市場の質が劣化してしまう」点だ。たとえ、純利益が2億円にも満たない企業でも、東証マザーズ市場で見れば平均レベル。この某企業より利益額が小さい会社はマザーズに113銘柄あり、マザーズ上場228銘柄のほぼ半分を占める。

 そこそこ利益のあるベンチャー企業が意気揚々とマザーズを卒業していくことで、残されたマザーズ市場のファンダメンタルズはさらに劣化するのだ。もちろん、マザーズにはIPO会社が毎年多く入ってくる。新しい銘柄で劣化を食い止めることができれば話は別だが、基本的には劣化していくように思う。どうだろうか?

 続いて、独断と偏見で選ぶ第2位は……「日銀ETF買い枠6兆円にざっくり倍増」としたい。「2年連続打率3割、30本塁打、30盗塁の“トリプルスリー”を達成したプロ野球界のスーパースターでも、年俸は1億3000万円増で推定3億5000万円という記事を目にした。一方、「2年で2%」を実現できなかった日銀は今年7月の金融政策決定会合で、年間ETF買い入れ枠を当初の3兆円から倍増の「6兆円」にした。これには驚いた。どういう査定で倍増になったのだろう……。

 16年の日銀ETF買いは合計で約4.4兆円に上った。これはすべての投資主体で最大の買い越し額であり、日本株市場の年間MVPは日銀で決定といえるだろう。これに対して個人投資家は年初来から(現物と先物合算で)約3兆円の売り越し。外国人投資家も同約2.5兆円の売り越しだった。

 日々の売買フローの中心である外国人と個人がこれだけ売り越しになりながら、指数が年初来プラスで終えられそうなのも日銀のおかげといえるだろう。日銀と、自己株買いや年金の買い分を含む信託銀行の大幅買い越しでプラスになった日本株。これを人は「官製相場」と呼び始めたが、確かに「官製相場」としか呼べないと思う。

大型株の時価総額がわずか8日で倍増

 今年は途中から年間枠が6兆円になったが、17年には通年で年間6兆円枠となる。テーパリングと呼ばれるような政策変更が断行されないかぎり、17年も日銀は日本株の最大の買い手になりそうだ(17年のMVPも開幕前から決まっている……)。年間6兆円買い越す投資家が確実に存在するわけだ。

 こうした状況下で、どうなれば17年末時点で日経平均株価やTOPIXが大幅安になるのか?日銀によるETF買い効果だけ抜き出しても、年間での下落が理屈で説明しにくい17年相場となる。これは多くのプレーヤーが感じていることだろう。この政策が続く以上、17年も自由市場の原理が存在しないことだけ覚えておきたいところだ。

独断と偏見で選ぶ第1位は……「任天堂 (7974)の仕手株化」である。もちろん、世界中で社会現象化した「ポケモンGO」を生み出したという理由はある。とはいえ、7月6日終値1万4380円から、年初来高値になった7月19日終値の3万1770円までの爆騰が記録的な事例になったのは間違いないだろう。

 発行済み株数が1億4166万株の任天堂株。「ポケモンGO祭り」の前でも時価総額は2兆円に達していた日本の大型株である。その大型株の時価総額が4.5兆円へ膨らむまでに要した時間が「わずか8営業日」だったわけだ。まるで仕手株のごとく舞い上がったのである。

 現在の任天堂の時価総額は約3.4兆円。これは、東証マザーズ市場の時価総額(現在3.4兆円)とほぼ同規模だ。マザーズ指数が8日間で2倍になったら大騒ぎだろう。それに近いことが任天堂株であのとき、現実として起きたわけである。

 株式市場全体の売買でいえば、16年は“低調”だった。年初から22日までの東証1部の1日当たり平均売買代金は2.31兆円で、15年の同2.54兆円を下回る。ただ、一点集中的に短期資金の群がる傾向だけはここ数年と同様、16年も健在だった。その一つが任天堂だったわけだが、そうしたタイミングでのフローのほとんどが、年間では売り越しだった個人と外国人だったと想像される。

 このうち、海外勢については、HFT(高頻度取引)などアルゴリズムを使った売買が相当量含まれていたとみられる。流動性が急激に上がったことや短期的なボラティリティがハネ上がったことを受け、「受動的」に反応した注文分が多かったのではないか。これに対して、ポケモンGOによる任天堂の変化を期待し、妄想し、「能動的」にエントリーした初期段階の買い手は個人だったと思っている。

17年末の日経平均は2万円乗せを想定

 個人投資家が、任天堂のような大型株を仕手株のような動きにしてしまう背景には、情報の駆けめぐるスピードが過去に比べて格段アップしたからではないかと思うところがある。今ではツイッターを代表とするソーシャルネットワークサービス(SNS)を専業投資家だけでなく、プロの株式ディーラーまでが必須のツールとしてトレードに活用するようになった。

 たとえば、「ポケモンGOがアメリカですごくはやっているらしい」という情報や、「任天堂株がやたら強い」といった情報が、一般的なメディアで記事化される前からSNSを通じて拡散される。その結果、多くの投資家に周知されるまでの時間は確実に短くなったうえ、早くなった。個人投資家が以前よりも早い段階で買い材料を発見する能力を得ているうえ、いち早く有利な値段を取りにいこうと迅速に動くようにもなったのだろう。

 その結果、ある程度同じようなタイミングで個人が買い注文を入れるようになる。こうした形で渾然一体となった個人の動きは、ある種巨大なヘッジファンドのような影響をもたらしているのではないか。そのモメンタムに反応したアルゴリズム取引がさらにモメンタムを増幅させるのだ。こうした光景は17年もいろんな形で目にすることになりそうだ。ツイッターが今の形で使われるかぎり……。

 以上、筆者が個人的に驚いたことを三つ挙げました。今年1年、「株式相場の雑記帳」のタイトルでコラムを書きました。年初、2016年1月の第1回コラムではこう書きました。大発会から急落し、日経平均株価が1万7000円を割り込んでいた1月26日時点でした。

昨年末1万9033円だった日経平均は、年末時点ではほぼ元通り1万9000円くらいで着地できるのでは?という話になる」(原文ママ)。

 単純に、日銀ETF買い(当時は3兆円枠)でこうなるだろうというだけの理屈です。それだけの理由ですが、ほぼ「ビンゴ」といえると思います。17年も米国のトランプ大統領就任後が心配やら、欧州の政治イベントが多いやら、中国リスク警戒やら、なんやらかんやらとありそうですが、理屈は同じではないでしょうか。年間6兆円買い越すと宣言している前代未聞の投資家が存在する以上、年末時点の日経平均は2万円を超えていると思います。

 ただ、2万円を超えて終わるとは思っていても、その着地点までにたどる経路がさっぱりわかりません。なんとなくですが、その経路は「多くの市場関係者や参加者が描いているシナリオとまるで違うのではないか」と思うのですが、いかがでしょうか??

(おしまい)

※株式コメンテーター・岡村友哉
株式市場の日々の動向を経済番組で解説。大手証券会社を経て、投資情報会社フィスコへ。その後独立し、現在に至る。フィスコではIPO・新興株市場担当として、IPO企業約400社のレポートを作成し、「初値予想」を投資家向けに提供していた。
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