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必ず押さえたい個人型DC活用のポイント

1月から加入対象拡大

鈴木 雅光
2017年01月03日
(写真:freeangle/PIXTA〈ピクスタ〉)

 確定拠出年金(DC)が誕生して15年。なんとなく節目っぽい時期に、制度の改善が行われる。1月から第三号被保険者(専業主婦)と公務員が新たな加入対象者になった。

 DCには企業型と個人型がある。企業型の場合、DCの制度を導入している会社で働く従業員は、例外なく加入させられる。「DCには興味がないから加入しない」といっても、その会社で働くかぎり、加入を拒否することはできない。そもそも企業型は、会社が従業員の福利厚生の一環として導入するものであり、掛け金は会社が払う。

 加えて、加入者である従業員に対して、投資教育や制度の習熟に関する研修も用意する義務を負っているため、企業型の加入者は非常に恵まれた環境で自分の年金資産の運用ができる。

 これに対して個人型は、加入するかしないかの判断がすべて加入対象者に委ねられている。加入したくなければ放っておけばいい。ただ、これは広く言われていることだが、確定拠出年金は掛け金の拠出時、運用収益の発生時、年金の受け取り時のいずれにおいても、税制面の優遇が受けられる。

 運用収益にいたっては基本的に非課税であり、このメリットを放棄する意味はない。当然、入らないよりは入っておいたほうがいい。

 今回の制度改正に際し、厚生労働省が「iDeCo(イデコ)」という愛称まで付けて広く世に知らしめようとしているのは、個人型のほうだ。個人型は従来、自営業者ならびに企業型DCを導入していない会社の従業員が加入対象者の中心だったが、1月からは第三号被保険者(専業主婦)と、公務員が加入対象者に加えられた。

 これによって、個人型の加入対象者数が約4000万人から約6700万人へ拡大するため、資金の運用先となる投資信託会社や、運営管理機関となる金融機関中心にお祭り騒ぎになっているというわけだ。きっとビジネスチャンスとでも思っているのだろう。ひょっとしたら、運営管理機関になっている銀行や証券会社の株式は「買い」かも知れない。

金融機関選びはコスト最優先で

 だが、そうは問屋が卸さないだろう。個人型が幅広く普及するには高いハードルを乗り越える必要がある。

 まず、運営管理機関である金融機関選びが大変だ。近所にある銀行で申し込めばいいと思っている人も多いだろうが、加入すればコストがかかる。ちなみに個人型DCのコストは加入時に支払う初期費用、毎月の掛け金から払う手数料、さらに、投資先として投信を選ぶと個別ファンドごとに決められた信託報酬も徴収される。コストが割高な運営管理機関を選んでしまうと、重いコスト負担がリターンに悪影響を及ぼすおそれがある。

 もう少し細かく見ていこう。初期費用は、国民年金基金連合会に支払う2777円が、運営管理機関の選択にかかわらず共通しており、これに別途、運営管理機関が独自の手数料を乗せる。多くの運営機関は手数料を乗せず2777円のみにしているが、中には高額の手数料を乗せて6000円以上の初期費用を負担させる運営管理機関もある。

 毎月の手数料は国民年金基金連合会に月103円、信託銀行に月64円が定額で、これに運営管理機関手数料がオンされる。この合計金額は安いところで月167円、高いところだと月642円だ。こうしたコストの中で、特に注意をしなければならないのが月々の手数料だ。

 個人型で今後、加入が増えると期待されている第三号被保険者(専業主婦)の場合、毎月の拠出限度額は2万3000円。もし、月々の手数料が642円だったら、拠出限度額いっぱいまで掛けたとしても、コストの料率は2.79%だ。これに投信の信託報酬が上乗せされたら、ローコストのインデックスファンドで運用したとしても合計で3%もの手数料負担になる。

 このため運営管理機関選びは、なにはともあれコストを最優先にして決めるべきだ。同時にチェックしておきたいのが運用商品の内容。中には高コストのアクティブ運用ファンドばかりをラインナップしているところがある。DCは長期積み立ての仕組みであり、株式の個別銘柄投資のように売り買いで利益を上げていくものではない。

 それを考えれば、世界中の株式に分散投資されたインデックスファンドを対象にするのが王道だ。コストの安い運営管理機関を通じて、きちんとグローバル分散された株式のポートフォリオを持つインデックスファンドを積み立てていくのが、正しいDCの使い方ということになる。

必要書類の記入も面倒

 株式の個別投資をしている投資家もいつかは老後を迎える。今は「億トレーダー」でも、ときには大きな損を被ることもあるだろう。なので、セーフティネットの一種としてDCを活用し、最低限の老後資金を準備しておくのは決して悪い選択肢ではない。

 話がそれてしまったが、たくさんある運営管理機関の中からコストが安く、かつ長期積み立てというDC運用の本筋に沿った商品ラインナップを持つところを、1月から新たに個人型の加入対象者になった第三号被保険者、公務員が適切に選べるのか、という点を考えるとやはり、個人型はまだハードルが高い。

 個人型は、企業型と違って継続研修などを受ける機会もないし、必要書類の記入も煩雑だ。実際、必要書類の不備率が高いと言われ、やり取りに時間を費やしているうちにモチベーションが下がってしまうことも十分に考えられる。

 より多くの人が利用できる、投資の非課税制度が充実するのは悪いことではない。しかし、加入手続きが煩雑であること、運営管理機関や投資対象を選ぶ際の情報が不足していることなど改善すべき点もある。そこをクリアして初めて個人に寄り添った個人型DCになるのだ。

すずき・まさみつ●岡三証券の支店営業、公社債新聞社の記者などを経て独立。JOynt代表を務める。金融ジャーナリストとして雑誌、書籍の執筆など多数。
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