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日ロ協力が進むとモスクワに東京駅ができる!?

シベリア鉄道に馳せる思い

菅野 泰夫
2017年01月10日
(写真:ユウ/PIXTA〈ピクスタ〉)

 昨年12月の15、16両日にわたって日ロ首脳会談が行われた。安倍首相とプーチン大統領の共同記者会見では、北方四島の共同経済活動の実施に向けた協議を始めるなど、平和条約の締結へ向けた第一歩を踏み出すことで合意したことが発表された。賛否両論はあるが、今後の両国企業のビジネス活性化や、戦後70年以上結ばれていない平和条約締結に少しずつ前進しており、日ロ間の新たな関係発展に期待したい。

 事前の報道では、共同経済活動プランに「シベリア鉄道の北海道延伸案」というびっくりするような壮大な計画が含まれている可能性も指摘されていた。シベリア鉄道とは主にモスクワと極東のウラジオストクまでを1週間かけて結ぶ、世界で最も長い鉄道として知られている。この路線の一部をアジア大陸と樺太(サハリン)の間にある間宮海峡(最狭部は約7キロメートル程度)および北海道の最北端にある宗谷海峡(同約40キロメートル程度)と橋またはトンネルで日本まで結ぶという壮大な計画である。

 すでに「フィージビリティスタディは終了している」との話もあり、計画をスタートさせるのは可能といわれている。宗谷海峡の最深部は70メートル程度と浅く、しかも津軽海峡を結ぶ青函トンネルの距離よりも短いため、技術的には問題なくトンネルで結ぶことができるそうだ。

 ただ、この壮大な計画には問題が山積みであり、そう簡単に実現できないことは誰もが理解している。貨物輸送以外での利用が多くはなく、極東地域への観光利用のニーズも未知数で、採算は度外視と言える。

 日本の鉄道とロシアのシベリア鉄道では線路幅の規格自体が異なるのも問題の一つである。ほかにも国境の整備やトンネルの維持管理費を両国どちらが負担するのかなど、クリアしなければならない点を挙げたらきりがない。

再整備計画は以前から存在

 もっとも、昨年10月で開業100周年を迎えたシベリア鉄道の再整備という話は昔から存在していた。筆者は10年以上前、ロシアの金融市場調査を担当しており、今は亡きロンドンの大先輩から最初にいわれた案件が、まさにこのシベリアランドブリッジ再整備のための資金調達スキームの調査だった。

 年金基金のインフラ投資や北米の専門市場に上場させるなど、莫大な建設費をさまざまな方法で調達することを検討してみたものの、当時から問題は山積みだった記憶がある。それでも、計画が大きければ大きいほど夢は膨らみ、「いつかはこのプロジェクトに何か貢献ができないか」と思うところもあった。

 ロシアから北海道までを結ぶ鉄道が実現できれば当然、東京駅までは新幹線などでつなぐことも可能なはずだ。つまり、東京駅からモスクワまで電車で行ける日がいつかは来るということである。

 知っている人は少ないとは思うが、モスクワにある長距離列車の駅はその出発地の地名ではなく、目的地の地名が名前になっているケースが多い。モスクワからサンクトペテルブルク(旧レニングラード)に向かう“レニングラード駅”、モスクワからウクライナへ向かう“キエフ(ウクライナの首都)駅”、筆者がよく買い物するモスクワのトヴェルスカヤ通り沿いにある“ベラルーシ駅”などが実際にモスクワ市内に存在する。

 駅の名が目的地だと、初めて乗る外国人でも駅を間違えないといったメリットがある。このルールが適用されると、モスクワから東京へ向かうシベリア鉄道の駅の名は “トウキョウ駅”となるはずである。

 このようなどうでもいい妄想を膨らませながら、いつかは東京とモスクワの親戚が電車で行き来できる日が訪れるためにも、今後の日ロ間の共同経済活動で何か貢献できることはないかと思う毎日である。

 大和総研 ロンドンリサーチセンター長 菅野 泰夫

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