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個人型DCで買えるファンドは意外に少ない

「不適格」商品がズラリ

鈴木 雅光
2017年03月06日
(写真:Rina/PIXTA〈ピクスタ〉)

 1月から「iDeCo」の名称で新しいスタートを切った個人型確定拠出年金(DC)は、その口座開設窓口となる運営管理機関ごとに、さまざまな運用商品が用意されている。あるインターネット証券だと、1年物スーパー定期と二つの積立年金保険という、3種類の元本確保型商品に加え、59本の投資信託の品ぞろえがある。

 確かに、取扱商品の数が多いほど利用者の選択肢は広がる。それは決して悪いことではないが、一方でそれだけの品ぞろえの中から、加入者自身が許容できるリスクに応じたポートフォリオを構築するために適したファンドを選別できるのか、という問題に直面する。単刀直入に言えば、選択肢が多すぎると、何を選べばいいのか迷ってしまう。

 iDeCoの運営管理機関の品ぞろえをチェックすると、「はたして、この投信を選ぶ意味はあるのだろうか」という商品もいくつか散見される。平たく言えば、「長期の資産形成を行うのに不適格ではないか」とみられる投信が含まれているのだ。これを省いていけば、iDeCoで買うべき投信はかなり整理されるだろう。

 まず、投資対象の思い切りかぶっているものがある。特にインデックス運用のファンドに多い。まったく同じベンチマークを持つファンドが数本、ラインナップされているのだ。この場合にはとりあえず、運用管理費用(信託報酬)の料率が最も低いものを選んでおけばいいだろう。

 とはいえ、そもそも「日本株のインデックスファンドが必要なのか」という問題にぶち当たる。インデックスはマーケット全体に投資するものであり、日本経済全体を買うのと同じだ。しかし、その日本は今、深刻な少子高齢化社会に突入し、人口は減少傾向をたどっている。人口減少は経済活力の後退につながる。

 そのような国の株価インデックスに投資しても、おそらく長期的な成長は期待できない。つまり、日本株のインデックスファンドはiDeCoの投資対象から外しても構わない、と判断できる。

ターゲットイヤー型も対象外

 「ターゲットイヤー型」のファンドも不要だろう。ターゲットイヤーとは2020、2025、2030といったようにファンド名の最後に西暦を示す数字が付いており、当該年に向けて債券への投資比率が徐々に高められていく。たとえば「2030」という数字の付いたファンドは現在、株式の組み入れ比率を高めたポートフォリオで運用されているが、株式をはじめとするリスク資産の組み入れ比率が将来、徐々に引き下げられ、逆に債券を中心に安定資産の組み入れ比率が高められていく。

 「若いうちはリスク資産への投資比率を高めにしてハイリターンを目指してもいいが、定年後は公的年金以外のキャッシュフローが得られないので、できるだけ元本割れにならないようなポートフォリオで運用するべきだ」という考え方に基づいた商品だ。ファンドが自動的に比率を調整してくれるわけだが、問題点もある。

 第1に、ターゲットイヤーに向けてリスク資産の投資比率が引き下げられるなかで、株価が上昇トレンドをたどったとしたら、その収益機会をみすみす見逃すことになる。

 第2に、定年を迎える年齢をターゲットにしてリスク資産に対する投資比率を引き下げることがはたして正しいのか、ということだ。平均寿命は延びており、これに伴い、高齢になっても生活費などのおカネがかなり必要になっていることを考えると、定年になった時点でリスク資産運用から降りるのはいささか不安が残る。できれば、定年後も一定のリスク資産を保有して、保有資産の運用利回りを高める必要がある。

 これら2点を踏まえると、ターゲットイヤーファンドはiDeCoの投資対象に含める必要はないと考える。

 インド株、中国株、ユーロ債券といった、特定の資産クラスに集中投資するタイプのファンドも、自分で細かくポートフォリオを調整して運用するようなマニアでもないかぎり、持て余してしまうだろう。資産クラスの異なる、複数のインデックスファンドでポートフォリオを構築するにしても、何を基準に、どの資産クラスに、運用資産全体の何パーセントを配分するのか、リバランスはどうするのかといった点を自分自身で考え、長期にわたって綿密に実行できる人は、おそらく皆無に等しいだろう。そう考えると、特定の資産クラスに投資するインデックスファンドも不要、ということになる。

日本株ファンドならインデックス型以外で

 ここまで削ると、iDeCoの投資対象はかなり絞られるはずだ。最終的に残るのは、インデックスファンドでも世界の先進国の株式市場に分散投資したのと同様の投資成果が得られるような商品。たとえばMSCIコクサイに連動するタイプが代表例だ。

 日本株に投資するならばインデックス型でなく、将来の成長性が高い銘柄を選別しポートフォリオに組み入れるアクティブファンドで、コストが安めのものなら買える。基本的に、非課税メリットを最大限に生かすなら、期待リターンの高いものに投資するべきであり、株式100%で運用される投信を選ぶのが王道と思うが、なかにはiDeCoで初めて投資をするので、できれば値動きのブレが小さなファンドを希望する人もいるだろう。その場合には、世界中の株式と債券に分散投資するグローバルバランス型のファンドをお勧めする。

 iDeCoは長期運用が前提なので、以上の条件をクリアしたファンドのなかでも、できるだけ運用管理費用などのコストが割安なものを選びたい。

 このような基準を用いて、ある運営管理機関の品ぞろえの中から本当に買える投信は何かをスクリーニングしたところ、3本のみが該当した。下と次ページ一覧表の白抜き部分のファンドがそれだ。あまりにも極端な事例なので異論もあろうが、少なくとも筆者がこの運営管理機関を通じて積み立てるなら、この3本を組み合わせる。

 より高い期待リターンを狙うなら、「ひふみ年金」と「DCニッセイ外国株式インデックス」の組み合わせか、もしくは「DCニッセイ外国株式インデックス」のみでもいいだろう。DCニッセイ外国株式インデックスは、先進国の株式市場に分散投資したのと同じ投資成果が得られるMSCIコクサイを連動対象とするインデックスファンドで、日本の株式は対象から除かれている。もし、日本の現物株式に投資しているのであれば、iDeCoはこれのみで十分だ。

 とはいえ、これではボラティリティ(変動率)が高いからこわい、というのであれば、「野村DC運用戦略ファンド」が良い。J-REITへの投資比率の高い点のみが不満だが、ほかのグローバルバランス型のファンドに比べると、日本の資産への投資配分比率はやや低め。日本経済の将来に対して悲観的ながらも安定的に預貯金を上回るリターンを求めるのであれば、ベストとは言わないが、ベターな選択にはなるだろう。

すずき・まさみつ●岡三証券の支店営業、公社債新聞社の記者などを経て独立。JOynt代表を務める。金融ジャーナリストとして雑誌、書籍の執筆など多数。
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