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期末要因で下落の可能性あるが「いつものこと」

年度末に向けて尻すぼみ?

瀬川 剛
2017年03月17日
日経平均は2015年3月に15年ぶりの1万9000円台回復(撮影:尾形文繁)

 米連邦準備制度理事会(FRB)は15日、市場の予想どおりに追加利上げを決定した。政策金利見通しを示す注目の「ドットチャート」から読み解くことができる年内の利上げ回数は2017年が3回(残り2回)、18年も3回で、前回とおおむね変わらない内容だった。利上げピッチの加速を警戒していた市場には安堵感が広がり、米国の長期金利は低下した。

 同日に投開票されたオランダの下院選挙では極右の自由党が20議席程度にとどまり、33議席程度を獲得したとみられる自由民主党から第一党の座を奪うことはできず、ポピュリズムの蔓延や欧州連合(EU)に対する遠心力が一段と強まることを警戒していた市場にとって、ひと安心の結果となった。

 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でのムニューシン米財務長官の発言への警戒が消えたわけではないが、外部要因による波乱への懸念は後退しそうだ。市場の関心は再び内部要因に向かいそうである。

足元は過度の楽観の修正局面

 内部要因で最も重要なのは、「投資家心理=センチメント」と考えている。米国のセンチメントはNYダウが一気に2万1000ドル台へ乗せた3月1日前後にここ数年で最も強気へ傾き、中旬にかけては反動に見舞われた。象徴的だったのは久々の大型新規株式公開(IPO)と注目を浴びたスナップチャット運営のスナップ(SNAP)の値動きだ。

 公開価格17ドルに対して上場2日目の3日には29.44ドルの高値まで買われたが、翌日からは急落歩調に転じ16日には20ドル台を割り込んだ。

 前回の当連載で取り上げたハイ・イールド債も2日には5.51%と、14年9月9日の5.50%以来の水準まで利回りが低下(価格は上昇)した。ハイ・イールド債は発行企業の2割程度が資源関連とあって原油相場との相関が高いことで知られている。

 14年9月ごろの原油相場は、指標のウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物が1バレル=92ドル前後の水準。米国内で稼働する原油および天然ガスの掘削装置、いわゆるリグの数は14年10月に1609とピークに達した。つまり、ハイ・イールド債は今月2日に「シェールブーム」の最終局面ともいえる時期以来の水準まで買われていたわけだ。

 その後はスナップの株価と歩調を合わせるかのようにハイ・イールド債も売られ14日には6.14%と昨年の12月下旬以来の利回りへ押し戻された。

 ただ、足元の10日程度の米国市場は過度な楽観の修正局面といえるだろう。それを勘案すれば、米国株の底堅さは相当なもののようにも見える。強気のガスを適度に抜きながら高値圏を維持状態であり、よほどの悪材料が出てこないかぎり大崩れしないのかもしれない。

発射台を低くしたい機関投資家

 一方、日本株の内部要因の関連で注目したいのは、3月決算など日本独特の会計制度がもたらす株価の変動だろう。

 01年3月期からの時価会計導入に伴い、金融機関などの保有する有価証券は原則として期末の時価による評価替えが義務付けられている。多くの銀行、保険、損保は3月の月中平均を「時価」としている。

 15日時点で日経平均の月中平均を試算すると1万9468円だ。時価会計導入後、最も高い水準だったのは15年3月の1万9197円。残り半月の平均値が1万8926円以上であれば、時価会計導入後の“最高値”を更新する計算だ。昨年4月ごろには想像もしなかった「すばらしい1年」で締めくくりを迎えようとしているのだ。

 問題は、ハッピーだった1年の年度末にどのような現象が見られるのか、である。15年3月は期末から7営業日前の3月23日に日経平均が1万9754円まで上昇したが、112円程度の配当落ちの影響も含めて期末は1万9206円での着地となった。

 申し分ない結果で期が終わろうとするとき、機関投資家の多くは翌年度のことを考慮して「発射台を低くしたい」という願望を抱くようなのだ。「アベノミクスラリー」の初期である13年3月期も今年以上に機関投資家にはハッピーな期末だったがこのときもやはり、期末から7営業日前に日経平均が高値を付け、期末に向けては尻すぼみの動きとなった。

 蛇足ながら期末がらみでもう一点、特有の現象を挙げるとすると「期初の株安」も指摘できる。機関投資家にとって簿価と時価の差が最も小さくなるのは期末だ。評価替えするので当然なのだが、資産圧縮の計画があるとすれば、まずは期の始まりと同時にある程度、それを済ませようという動きもここ数年見られる。日経平均が4月の年度初めに4年連続で下落しているのは、それによるものと考えられる。

 外部要因に特段の変化はなくとも3月期末前後には株価が下落する場面があるかもしれない。だが、動揺する必要はないだろう。「いつものこと」なのだ。

せがわ・つよし●新日本証券(現みずほ証券)に入社後、株式投信の運用業務、情報部門、自己売買部門のマネージャーなどを歴任。さくら証券にエクイティ部部長として勤務後、2001年4月に新光証券(現みずほ証券)にストラテジストとして入社。独立後は経済番組のコメンテーターとして活躍し、現在は瀬川投資研究所代表。市場関係者への丹念な取材や緻密なデータ分析に基づいた独自の相場解説で人気。
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