原油価格の予測に欠かせない重要なデータとは?

カギ握るサウジの石油戦略も見えてくる

岡田 晃
(写真:Nobuta/PIXTA〈ピクスタ〉)

 世界的な株価下落が続く中で、原油安が止まりません。ニューヨークの原油先物市場でWTI期近物がついに1バレル=30ドルを割り込み、12年ぶりの安値をつけました。

 原油安は2014年末から本格化していました。その背景は、①ここ数年の米国のシェール革命、②サウジアラビアのシェア優先戦略、などで原油生産の増加が続く一方で、中国など新興国経済の減速で世界的に原油需要が鈍化していることです。さらにここへきてサウジとイランの断交をきっかけに、原油価格は一気に下げ足を速めました。

 こうした原油安の背景は、国際エネルギー機関(IEA)が毎月発表している「世界石油市場月報」のデータから読み取ることができます。IEAは日欧米など先進国中心に29カ国が加盟する組織で、世界のエネルギー需要と供給について石油輸出国機構(OPEC)など非加盟国も含め国別の動向を調査し「月報」として発表しています。

 まず米国の原油生産の増加ぶりをチェックしましょう。かつてはサウジが世界の原油生産1位でしたが、00年代に入ってロシアが1位となり、13年以降は米国が1位となっています。米国の原油生産量は10年ごろまで日量700万バレル台。微増傾向でしたが10年以降は急増し、15年11月には同1280万バレルに達しています。5年間で65%もの増産で、シェール革命の勢いを見せつけた格好です。

 これに対してサウジはここ10年ほど微増ないし横ばいにとどまっています。OPECの盟主として、生産枠を守るため全体の調整役を果たしてきました。しかしその結果、米国にシェアを奪われてしまったため、14年11月のOPEC総会では「減産せず」の決定を主導し、それ以後は自らも増産に動いています。15年11月の生産量が14年の年間平均より約7%増加したことが、それをよく物語っています。

 ほかのOPEC加盟国の多くもサウジに追随し増産しています。OPEC全体の生産枠は一応、日量3000万バレルですが、実際にはかなり上回る水準で、11月は3173バレルを記録しました。昨年12月のOPEC総会では、現状の生産水準を容認して生産枠を棚上げ。もはやOPECは機能停止状態と言ってもいいでしょう。

 その中で、サウジ以上に増産が目立つのはイラクです。同国は00年代のイラク戦争の影響で原油生産が落ち込んでいましたが、復興が進むにつれて原油生産も急ピッチで増えており、15年11月は29%もの増産となっています。

 いわば主要産油国が増産競争に走っている形で、その結果、世界全体の原油生産も増加が続いているのです。むしろ、増加ピッチは速まっていると言っていいでしょう。

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