個人投資家にも役立つ!行動ファイナンスを投資にどう生かす?

真壁昭夫教授に聞く「負けない投資」

島 大輔
JanPietruszka / PIXTA(ピクスタ)
 2月中旬の1万5000円台を割り込む大幅下落からは持ち直しているものの、いまだ不安定な状況が続いている東京株式市場。そんな相場だからこそ、行動ファイナンスの知見を活用し、個人投資家の強みを生かした投資法を実践したいところ。行動ファインスをわかりやすく解説する『金融マーケット 勝つ法則』(朝日新書)を著した信州大学の真壁昭夫教授に、「心の癖をつかみ、負けない投資をする」ためのアドバイスを聞いた。

ーー行動ファイナンスの「プロスペクト理論」では、損失が出るとリスク愛好的になるなど非合理的な行動をしがちな傾向が出ていると指摘されています。年初から大きく下落した今の相場でそれを避けるには、「休むも相場」でしょうか?

 それは投資戦略次第だ。短期のディーリングをするのであれば、値動きの激しい今のような状況は絶好の稼ぎ時になる。ただ、一般の投資家が長期投資をするのであれば、ひとまず休むという選択肢もある。個人投資家向けのセミナーでも言っているが、ボラティリティの非常に大きな不安定な相場では、「お急ぎでない方は、立ち入り禁止」だ。

 相場は”希望”と”恐怖”でできている。「株は上がるだろう」という希望と、「株が下がって損するかもしれない」という恐怖が入り交じり、オーバーシュート(行きすぎた変動)をする。理論的には、相場全体はその国の潜在成長率と同じペースで上昇していく。しかし、実際には投資家の希望が高まると株価は上がりすぎ、恐怖が高まると株価が下がりすぎるということが起きる。

まかべ・あきお●信州大学経済学部教授。多摩大学客員教授。第一勧業銀行(現・みずほ銀行)、みずほ総研主席研究員などを経て現職。近著に『VW不正と中国・ドイツ経済同盟』(小学館刊)。(撮影:梅谷秀司)

  このようにボラティリティが上がる中で、リスクをとっても稼ぎに行く短期売買の投資家は、へたをすれば大損するが、うまくいけば非常に儲かる。短期投資が得意な人もいれば、長期投資が得意な人もいるので、それぞれに合った投資法を見つけることが大切だ。

ーー年初からの日本市場のボラティリティは、先進国市場の中でも特に大きくなっています。

 その理由は三つある。まず、日本株は世界景気の影響を特に受けやすいということ。日本では自動車と電子部品を中心に輸出比率の高い企業が多く、世界的な景気変動によって業績が大きく動いてしまう。もう一つは、為替だ。海外での販売比率が高い日本企業は、円安によって業績へのプラス影響が大きく出る。海外の機関投資家はそれを意識しているので、為替の動向を注視して円安になると日本株を買いに動く。一方で円高になりそうだということになれば売りが増えるため、為替の動きが株価に大きく影響してしまう。

 最後に、ソブリン・ウェルス・ファンド(政府系ファンド、SWF)の動きもある。中国や中東のSWFは日本株を大量に保有しているが、中国経済の減速や原油価格下落に伴う財政悪化で、換金売りが増えている。今の東京市場は売買代金の6割以上が海外投資家であり、海外投資家が日本株を売ってくれば、それに買い向かうことができないという面もある。

ーーボラティリティの大きな相場において、個人投資家は高値づかみや塩漬けをしがちですが、これを防ぐためにも行動ファイナンスの知見は有効ですか?

 どちらかというと、プロスペクト理論は短期投資で役に立つ。短期の売買と長期投資で比べると、言うまでもなく短期売買のほうが難しい。株価が上がってくると買いたくなり、下がってくると売りたくなるため、高値づかみをしやすい。適正な価格に対する心理的なバイアスを意識することで、これを避けることができる。 

 長期投資では、恐怖で株式市場がオーバーシュートして市場参加者が総悲観となった時に、いかに冷静になって買えるかという点で、行動ファイナンスの知見が役に立つだろう。長期投資においては、希望が高まって株価が上昇している局面ではなく、恐怖で下がっている局面が買い場となる。

ページトップ