投資前に確認! コンプライアンス違反企業を見抜くチェックポイント

イノベーションと不正防止の共通点

岩崎 日出俊
15年に不正会計の責任を取って社長を辞任した、東芝の田中久雄前社長(中央、撮影:尾形文繁)

 近未来を見据えた投資術というと、「このテクノロジーが将来の世界を席巻するだろう」といった視点が中心になりがちだ。しかし「ハイテク日本」をリードしてきたオリンパス(7733)東芝(6502)の失敗例を見ればわかるように、そもそもコンプライアンスがしっかりしていない企業は投資対象としては失格だ。

 コンプライアンスというと、一見地味で面白くないと思われがちだ。私は1998年、日本興業銀行(興銀、現在のみずほ銀行)から米系投資銀行(JPモルガン)に転職したが、転職先の投資銀行では意外にも日本の銀行以上にコンプラアンス部門の力が強く、びっくりした。日本の優良企業からM&Aの依頼を受けても、その企業が新規の取引候補先の場合は、自行と取引するに値するかどうか、ニューヨークのコンプライアンス部門のチェックを受ける。

 当時私は「コンプライアンス部門といっても担当はニューヨークにいる米国人。日本のことはさほど詳しくないのではないか」と思ったが、そんなことはなかった。彼らはその道の専門家で、独自のネットワークを有していたのだ。クロール社などグローバルな拠点網を持つ信用調査会社からも情報を得ていて、日本の裏社会事情にも通じている。邦銀であれば是非とも取引したいと考える日本の優良企業案件をニューヨークに上げても、「その会社のCEOにはこんな噂もある。チェックしたのか」といった指摘が飛んでくる。

 興銀の先輩に「外資といってもコンプライアンスの力が強くて驚きました」と言ったら、「金融機関にとって一番大切なことだ。うるさいことを言われてビジネスがやりにくいと感じるかもしれないが、後できっと良かったと思うようになる」と諭された。

40年間も同じ問題に悩まされているネスレ

ハーバードやスタンフォードのビジネススクールは日本では「資本主義の士官学校」と形容されることもあるが、現実はだいぶ違う。たとえばスタンフォードではフィールドトリップでグアテマラやエチオピアなどに行って格差の問題を議論したりする。また昔から倫理やコンプライアンスについて教えられていて、私が学んだ当時は「ビジネスと変化する環境」と称する必修履修科目が評判だった。

 企業倫理などを扱うこのクラスではネスレのケースなども取り上げられた。ネスレは創業者アンリ・ネスレが1860年代、母乳の代替となる乳児用乳製品を開発したことでスタートした。しかしながら1970年代に入って、一部の途上国で粉ミルクを試供品として無料で新生児に配ったことで、母親の母乳分泌を不活性化させたとして批判を浴びた。また途上国では衛生状態の悪い水と混合してミルクが作られたため、新生児の病気の原因となったことも問題視された。

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