オンコリスが苦難を越えて実現目指す、がん細胞を溶かす治療薬(下)

浦田泰生社長に聞く

小長 洋子
思わぬ番狂わせで苦戦が続いたものの、ようやく明るさが見えてきたオンコリスバイオファーマ。創業以来の経緯と今後の方針について、浦田泰生社長に聞いた。

ーーオンコリスバイオファーマの第1創薬ターゲット、「腫瘍溶解ウイルス」とはどんなものですか。

うらた・やすお●1955年愛知県生まれ。京都薬科大学、同大学院修士課程修了。83年小野薬品入社(臨床開発部)、94年日本たばこ産業入社、医薬総合研究所、研究開発企画部長、医薬事業部調査役等を経て、2004年3月オンコリスバイオファーマを設立し現職。(撮影:今井康一)

 腫瘍溶解ウイルスとは、腫瘍、つまりがん細胞でだけ増え、がん細胞を溶かしてしまうウイルスのこと。岡山大学の田中紀章、藤原俊義両教授が開発したバイオ医薬品であり、アデノウイルスを使う点が特徴です。他にも似たような考え方で、ヘルペスウイルスなどを使う研究もされていますが、当社の使うアデノウイルスは風邪のウイルスですので、副作用があっても若干の発熱がある程度で、重篤な症状はない。FDA(米国食品医薬品局、医薬品の承認などをつかさどる)でも安全性が認められています。

 腫瘍溶解ウイルスががんに働くメカニズムとしては、まず、がん細胞増殖のカギを握るテロメラーゼという酵素に着目しました。テロメラーゼ活性のある細胞(=がん細胞)でだけ増えるように遺伝子を組み換えたウイルスを作ります。このウイルスをがん組織に注入すると、がん細胞にだけ取りついて内部に入り込んで増殖し、がん細胞を分解して溶かしてしまいます。

 増殖したウイルスはさらに別のがん細胞に取り付いて破壊を繰り返し、最終的にがんが縮小していきます。一方、このウイルスは遺伝子改変してあるので、テロメラーゼが不活性な細胞(=正常細胞)では増殖しません。

長期データに大きな自信

 米国での臨床1相の生データを見直してみたのですが、メラノーマの患者さんでの奏功が非常によかった。興味深かったのは、試験期間8週間のうちに、ウイルスを注射した患部でも腫瘍が縮小していますが、転移した他の部位の腫瘍も縮小した例が複数あったのです。試験期間中でもある程度の効果は現れていましたが、試験期間を過ぎてからあとになってからより大きな効果が出ています。

 治療対象領域以外に効果が現れることをアブスコーパル効果と言い、放射線治療でよくおこります。抗腫瘍免疫が賦活化する。どういうことかというと、ウイルスが分解したがん細胞の特徴を樹状細胞(免疫細胞に異物の特徴を提示する役目を持つ)が察知して免疫をつかさどるリンパ球に知らせます。それによって全身の免疫が活性化するのです。

 ある患者さんで、テロメライシンの投与前はキラーT細胞(異物を退治する)が16個しかなかったのが、投与後には160個になっている。樹状細胞も192個から462個に増えていました。一方で免疫を抑制する細胞は96個から67個に減った。非常に理にかなった結果が出ていたのです。

 効果が大きく現れたのが事前に設定した試験期間よりも後なので、残念ながら治験データとしては使えません。しかし、大きな自信になりました。最近話題になっている免疫療法、PDー1抗体医薬は、がん細胞に対する免疫の抑制機能を外すものですから、テロメライシンとの相性がいいのではないか。併用療法にならないかと考えています。

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