大地震の「テールリスク」に、投資家はどう備えるべきか?

菊池誠一氏に聞く

島 大輔
起きる確率はそう高くはないが、いったん起きると、巨大な影響を及ぼすことが予想される事象を「テールリスク」という。日本列島やその周辺で起きる大地震は、典型的なテールリスクである。日本経済新聞社で経済・産業記者、格付けアナリストを務め、その後、大学教授に転じた菊池誠一氏は、テールリスクの象徴ともいえる大地震と株式投資の関係に着目し、著書『大地震と株式投資』(日経BP社刊)で詳細な分析を展開している。投資家が大地震にどう備えるべきか、菊池氏に聞いた。

ーー著書の中で、大地震が起きたときの株式市場と金融市場への影響を細かく分析していますね。

 大地震にはいろいろなパターンが想定できる。安易な一般化は避けるべきだろうが、日本列島に住み日々、円で生活している投資家が最も警戒すべき対象となると、南海トラフ沿いの太平洋で発生が予想される巨大地震と首都圏を襲う大地震の二つが当面、焦点になる。政府機関の地震調査研究推進本部が公表している日本列島とその周辺の大地震の調査によると、両地域とも今後30年間の地震発生の可能性が70%程度となっている。

 後者は、被害地域が限定された直下型地震のように思えるかもしれないが、首都圏経済の大きさ、集積度、そこから派生する経済的被害の大きさなどを踏まえると、南海トラフ巨大地震と並んで深刻な影響を市場に及ぼすだろう。

  大地震(イベントX)が発生すると、株式市場や債券市場、為替相場は大きく動く。特に大地震では、上場企業が保有・運営する固定資産(工場、店舗、ビル、その他関連施設)が破壊され、その「経済的価値」を失うことにつながるため、株価の大幅下落は避けられない。

株価の下落幅と低迷期間

きくち・せいいち●1970年京都大学法学部卒。日本経済新聞社にて経済・産業記者、格付 けアナリストなどを務め、95年から大学教授に転じ北海道大学経済学部客員教授などを歴任。資産運用、株式投資などの著書多数。

 そこで問題は、上記のような大地震が突然、起きた場合、どれだけの幅で株価が下がるのか、そして震災の復興過程に入ってから、どれぐらいの間、株価低迷が続くのか、という2点になる。

  まず第1の点だが、南海トラフ巨大地震、首都圏大地震の場合であれば、日経平均株価でみて短期的には1万円を割ってしまうのは当然であり、場合によっては7000円割れ、最悪のシナリオを描くと5000円割れを覚悟すべきかもしれない。

  2011年3月11日に起きた大地震は、金曜日の午後3時「大引け」の直前に起きた。市場は地震発生後10分ほどで土日の休みに入ったため、株式市場へのインパクトが限定的なものになったとみられる面がある。

  次は株価の回復期間だが、場合によっては10年以上、あるいは20年間以上もかかって、やっと回復へといった状況も想定できる。内外の株式市場の歴史を振り返ると、株価低迷を生んだ原因はいろいろだが、20年間ぐらい低迷が続いたことは珍しくない。

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