フェアディスクロージャー・ルールは必要か否か

導入をめぐって百家争鳴の様相

横山 淳
写真はイメージ(撮影:梅谷秀司)

 FDルールとは、一般に「公表前の内部情報を特定の第三者に提供する場合に当該情報が他の投資者にも同時に提供されることを確保するためのルール」と説明されている。すなわち、投資判断に重要な影響を与えるような情報(たとえば、業績予想の大幅な修正など)で未公表のものを、特定の第三者(たとえば、大株主、アナリストなど)だけに提供する(選択的開示)のは原則として許されない。

 仮に特定の第三者に提供するのであれば、その情報が他の不特定多数の投資者にも同時に(あるいは速やかに)提供されるよう必要な対応を行わなければならない、というルールである。

 米国や欧州連合(EU)ではすでに導入されており、日本でも2016年4月18日に公表された「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告ー建設的な対話の促進に向けてー」の中で、導入に向けた検討を行うことが提言されている。

 FDルールの趣旨は、重要な情報へのアクセスに関する投資者間の公平性確保と、インサイダー取引の防止にある。この趣旨に正面から異議を唱える人はいないだろう。しかし、実際の導入となると、論者には積極論から慎重論まで幅広い意見があるようだ。これは、同ルールが「諸刃の剣」の性質を持つためだと思う。すなわち、論者がどのような局面での適用を想定しているのか次第で、ルール導入への評価や意見が分かれているように感じるのだ。

 コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードに基づく企業と株主の「建設的な対話」を考えてみよう。「対話」にかこつけて他の投資者を出し抜き、発行会社から目先の業績やコーポレートアクションに関する未公表情報を聞き出そうとする投資家を念頭に置けば、「FDルールは必要」と考えるのは当然だろう。

 だが、コーポレートガバナンス・コードに従うため渋々、「対話」に応じている経営者を念頭に置くと、都合の悪い対話を拒絶する絶好の口実としてルールが使われることを危惧し、「導入は慎重に」となるのも無理はない。

ページトップ