トランプ勝利の深層を読み解く3つのデータ

経済は好調でもなぜか敗れた民主党候補

岡田 晃
失業率は低水準でほぼ「完全雇用」に近い状態だったが…(米ニューヨーク、五番街沿いのビルは「トランプタワー」)

 米大統領選はまさかのトランプ氏の勝利となりました。選挙戦の経過も結果もまさにこれまでの常識を覆すものでしたが、これをマクロデータの面から見ても、常識が通用しなくなった三つのデータが浮かび上がってきました。いずれもなじみの深いデータで、それらがトランプ氏勝利のカギを握っていたことがわかります。

 その第1は、失業率です。経済状態の良しあしが国民生活に最もわかりやすい形で現れるのが失業率で、過去の大統領選を見ても失業率の動向は選挙戦に大きな影響を与えてきました。失業率が低下すれば、現職または現職与党が有利になるのがこれまでの常識でした。

 今回の投票直前の4日に発表された10月の失業率は4.9%で、極めて低い水準でした。にもかかわらず、現職与党の候補であるクリントン氏が敗北したのです。

 米国の過去の失業率の推移を見ると、現職のオバマ大統領が選挙で勝利した2008年11月はちょうどリーマンショック直後で、当時の最新の失業率は6.5%でした(同年10月分)。その後はリーマンショックによる不況で一時10%まで上昇しましたが、10年以後は着実に低下を続けていました。

 今年に入ってからは4.7~5.0%で推移しており、リーマンショック以前の水準まで低下しています。米国ではこの水準はほぼ完全雇用に近い、と言われており、まず申し分ない数字と言っていいでしょう。

 今回のトランプ氏の勝利は、格差拡大や移民増加への反発が背景にあり、「白人労働者が移民に職を奪われて失業が増えている」との声がメディアなどで取り上げられていました。もちろん個別にはそのような現象が起きているとみられますが、少なくとも失業率の数字から見るかぎり、それは過度に喧伝されている気がします。

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