保護主義的な動きはすでに出始めている

トランプ大統領誕生で広がる懸念

岡田 晃
米国のトランプ次期大統領は日本車の関税を大幅に引き上げるべきだと主張していたが…(写真:阿野陽/PIXTA〈ピクスタ〉)

 市場ではトランプ次期米大統領の経済政策への期待から株高・円安が続いていますが、その一方で同氏の保護主義的な考え方に対する懸念が強まっています。保護主義は関税や各種規制によって貿易障壁を高くすることで自国産業を保護しようとするものですが、それは結局、貿易の縮小を招き、世界経済の停滞につながるおそれがあります。

 実はすでに世界貿易は縮小とまでいかないまでも鈍化が著しくなっているという事実があるのです。世界貿易機関(WTO)が9月末に発表した2016年の世界貿易量予想は前年比1.7%増で、リーマンショック直後の09年以来の低い伸びとなりました。

 従来予想(16年4月発表)は2.8%増だったので、大幅な下方修正です。WTOは16年の世界の実質GDP伸び率を2.2%増と予測しており、貿易量の伸びが実質GDPの伸びを下回る見通しです。

 リーマンショックまでは、世界貿易量の伸び率が世界経済の成長率の伸びを上回るのが普通でした。ところがリーマン以後は1.0倍余りから1.1倍程度、つまり両者の伸びはほとんど同じになっていました。16年には貿易量の伸びがついに世界経済の成長率のそれを下回る見込みとなったわけです。

 17年の世界貿易量予想も従来の3.6%増から1.8~3.1%増へ下方修正しました。17年のGDP予測は2.5%増となっており、2年連続で貿易量の伸び率が成長率を下回る可能性があります。もしそうなれば、1981~82年の第2次石油危機当時以来、35年ぶりのことになります。

 この現象は「スロー・トレード」と呼ばれ、WTOなどの国際機関やエコノミストの間で最近、にわかに注目を集めて議論の的となっています。

 「スロー・トレード」の背景として考えられるのはまず、景気減速によって各国の消費や設備投資が抑制され、それに伴って輸出入など貿易の伸びが鈍化することです。いわば循環的な要因ですが、貿易量の伸びの鈍化が長期化していることから考えると、そうした循環的要因以上に構造的な変化が大きいと見られます。

 たとえば、従来は先進国企業が国内で生産した製品を新興国に輸出していたのに対し、近年は新興国での現地生産に切り替える動きが広がっています。その結果、新興国の国内で生産から販売まで完結するため、その分の貿易は減ることになります。こうした動きは一時的なものではなく構造的な変化です。

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