それでも379万円、あの優良企業の「株式2分割」の真意

個人投資家には関係ないけどね…

岡村 友哉
分割しても個人投資家には手が出しづらい…(撮影:尾形文繁)

 週初5日の取引時間終了後、別にどうということでもない「株式2分割」のニュースに市場関係者はザワめき立った。というのも、その発表をしたのが、セレブ御用達の香りを放ち、一般投資家に近寄りがたい雰囲気を株価で発するキーエンス (6861)だったからだ。同社はこの日、2017年1月20日現在の株主に対し、1株を2株に分割すると発表。併せて、筆頭株主ティ・ティ(創業者滝崎家の資産管理会社)の保有する150万株の株式売り出しも発表した。

 同社の株価は5日終値時点で7万5800円である。100株単位なので、最低投資金額は758万円という超値がさ株だ。アベノミクス開始直後の株価は2万円台。当時から値がさ株だったが、気付けばおそろしい株価になっていた感がある。投資家向け広報(IR)活動に積極的ではないことで知られ、「この態度ではコーポレートガバナンスが大きなテーマになった日本株市場で敬遠されるぞ!」といった論調が昨年などは目立っていたが、そんなきれいごとなど関係ないのをその株価が背中で物語っているようでもある。

 このキーエンス、過去には株式分割を頻繁に行ってきた。1994年に1株を1.1株に分割し、それを皮切りに規律正しく「3年に1回ペースで1.1分割」を繰り返してきた。分割は12年まで実に7回に及ぶ。ただ、経験則通りなら15年に1.1分割するはずが、昨年はそれをスルー。そして、8回目の株式分割にして初の「2分割」だったのである。この経緯があるからこそ、単なる2分割でも驚かれたのである。

 この分割について、「投資しやすくなる」とか「流動性向上といったメリットを与える」といったコメントを見るがはたしてそうだろうか?758万円の株が379万円になったから買う投資家が日本にどれほどいるのだろう。分割しても最低投資金額が300万円を超える株である以上、個人投資家が近寄らない株であり続けることは変わらないのではないか。

 上場株で、最低投資金額が300万円以上の銘柄を高い順に並べると、東証1部ではキーエンスがトップだ。しかし、新興株市場を含めるとジャスダックのエスケー化研 (4628)が最高額。最低投資金額は1000万円を超える。

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