米国に「チェンジ」をもたらしたものは

浮かび上がる競争社会のひずみ

土屋 貴裕
米国の競争社会は「価値観の相違」という大きなひずみを生んだ(写真はニューヨーク・マンハッタン)

 米国の選挙で、宗教的背景は候補者の特徴を理解するためのポイントの一つに挙げられる。11月の大統領選では、経済の回復に乗り遅れた白人のブルーカラー労働者が既存政治に反発し、トランプ候補当選の原動力になったとされる。だが、そこには経済的理由以外に価値観の違いもあるのではないだろうか。

 1620年のピルグリム・ファーザーズの米国上陸が、建国に向けた第一歩とされる。実際には15世紀から多くの欧州人が米国大陸へ渡ったが、反権力の宗教的自由を求めた最初の移民を建国の第一歩としていることは、宗教の重要性と信教の自由を物語っている。

 結果的に、米国はキリスト教中心の国だとしても、カトリックとプロテスタントという二分法では無理で、連邦議会の議員もプロテスタント中心ながら宗派は多岐にわたり、モルモン教やユダヤ教など多様である。カトリックであるヒスパニック系(中南米系)の移民が増えて、構成はさらに変化しつつあるようだ。

 近年はイスラムへの反発があるが、1920年代には移民制限法が成立し、国別に人数を割り当てたり、中国からの移民を禁止したりした歴史がある。一方、同じ時期ないし、少し前の20世紀初頭には公権力による社会・経済秩序の維持を目的とした制度整備が行われた。連邦準備制度理事会(FRB)の設立、反トラスト法の制定、予備選などの直接民主制の整備、などである。

 「王侯貴族の支配する欧州とは異なる反権力の国を作った」という理念に根差した、産業資本の勃興に伴う独占や寡占、有力者の支配への反発が背景にはある。政府は権力者でなく、社会一般に貢献する組織である、という前提だ。貧富の差はあっても階級社会ではなく機会の国であり、競争社会であることが米国的なのだろう。

 ただ、反権力主義に基づく競争社会では人とのつながりが大切になり、価値観の維持が重要性を増すと考えられる。以前からの住人が多数を占める国の郊外では新たな移民がもたらす異なる文化や価値観は受け入れられず、社会構成を変化させたくないという意識が移民の制限につながったとされる。

ページトップ