「貿易摩擦相場」復活なら1ドル60円までの円高も

日本バッシング再来の悪夢

新見 未来
米国のトランプ大統領は「数十万台の日本車が大きな船で米国に入ってくる」光景を実際に見たことがあるのだろうか…(写真:nao2015/PIXTA〈ピクスタ〉)

 国内景気は2016年前半まで足踏み状態だったが、製造業の在庫調整一巡に加えて、海外景気回復と円安による輸出増を背景に上向きつつある。国内景気動向を端的に示す鉱工業生産は16年1~3月に前期比1.0%減となったが、4~6月には0.2%増、7~9月1.3%増、10~12月2.0%増と尻上がりに伸びが加速した。13日発表予定の16年10~12月のGDP(1次速報)も7~9月(0.3%)並みの緩やかな成長が予想されているが、上振れの可能性があるだろう。

 ただ、こうした景気指標よりも注目する必要があるのは10日の日米首脳会談後の外国為替市場の動きだ。会談では安全保障問題のほか貿易・通商問題が議題に上る。結果次第では日米貿易摩擦が再燃し、円相場を大きく動かすおそれがある。

 しばしば言われていることだが、為替相場は二つの国の物価、金利、国際収支などの要因に左右されて動くが、状況次第で相場の決定要因が大きく変化する。金利の動きが為替相場の決定要因になるときもあれば、国際収支やそれに関連する貿易摩擦など政治的なファクターが決定要因になるときもある。

 最近は日米金利差(あるいは日米の金融政策)が円相場の主な決定要因になっている。06年以降の日米10年国債利回り格差とドル・円相場の動きをみると(図1参照)、14年後半~15年ごろの一時期を除いて、両者の相関は非常に高い。相関関係がほとんどなかった14年後半~15年ごろは日米の金融政策の方向性の違い(期待)を材料に、金利差で説明できる以上に円安方向への乖離が一時的に進んだが現在、乖離はかなり解消された。

 06年1月から14年7月のデータを基にした最小二乗法による推計では、金利差からみた円相場の適正水準は103円程度(=64+16.4×2.4%)。金融政策の方向性の違いなどでドル高のプレミアムが多少残っていると考えれば、今の相場水準も説明の範囲内だろう。

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