貿易赤字は国の「損失」にあらず

米大統領の批判はあまりにも一面的

岡田 晃
(写真:alexlmx/PIXTA〈ピクスタ〉)

 ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任して1カ月が経ちました。入国制限の大統領令などに対し米国内で反発や批判が高まっていますが、トランプ大統領は強硬な姿勢を続けています。

 そんな中で行われた先日の日米首脳会談では、心配された貿易・為替問題について同大統領から日本を批判する発言は出ませんでした。これは日本側が事前に準備して、批判をうまく封じたと言えます。

 しかし、いずれまた日米貿易不均衡や円安への批判を再開するのではないかとの不安は消えません。前回の当コラムで貿易赤字などをめぐる同大統領の主張には「ウソ」が多いことを指摘しましたが、そもそも貿易赤字についての同大統領の認識自体に問題があるように見受けられます。今回はそれを検証しましょう。

 トランプ大統領のこれまでの発言を見ると、貿易赤字を「ロス(損失)」と表現し、貿易不均衡の是正を「ディール(取引・交渉)」ととらえています。前回のコラム配信後、新たに2016年の貿易収支が発表されました。それによると16年の「モノ」の貿易赤字は7343億ドルでした。トランプ流にいえば、米国は7343億ドルの損失を出したことになります。

 ただ、それを財務諸表のひとつである損益計算書の「損失」のようにとらえるのは誤りです。貿易赤字、つまり輸出より輸入のほうが多いことは、その国の需要を賄うために多くのモノを海外から輸入した結果であり、国内の景気が拡大し消費が増加すれば輸入は増えます。

 換言すれば、世界一の経済大国の需要を賄うにはある程度、輸入に頼らざるをえないのです。むしろ、米国内には足りない多くのモノが海外から集まって需要を満たすのですから、それは「損失」とは言えないわけです。

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