善か悪か、「超高速取引」のおそろしい実態

投資家はカモにされている?

エミン・ユルマズ
東証は2010年の「アローヘッド」のサービス開始と同時にコロケーションサービスも開始、日本でもHFTは増えている(撮影:尾形文繁)

 先月のコラムで筆者は「今年はポピュリスト政治が負ける」と書いたが、さっそく実現している。

 3月11日、オーストラリアの西オーストラリア州で行われた州議会選挙で、野党労働党が勝利し、極右政党ワンネーションは敗北した。同選挙のポイントは、昨年から勢いにのっている、極右・ポピュリスト政治の初の敗北という点であり、象徴的出来事といっていい。ワンネーション党は移民と外国人労働者の受け入れ制限を掲げており、ターンブル首相の自由党とも選挙協力をしていた。

 オーストラリアに続いて3月15日のオランダの下院選挙でも、「反イスラム」や「反移民」を掲げた極右ウィルダース氏の自由党(PVV)は敗北した。この一連の出来事は偶然ではなく、フランス大統領選挙へと続くだろう。昨年はポピュリズムが台頭した年であったが、今年は後退する年となりそうだ。

10億分の1秒の男たち

 今月紹介する本はマイケル・ルイス著『フラッシュ・ボーイズ』(2014年、文藝春秋刊)である。米国の超高速取引業者についての本だが、素人にはわかりにくい超高速取引の「実態」を非常にわかりやすく解説している。

写真をクリックするとAmazonにジャンプします

 2010年5月、ダウ平均株価がわずか数分で1000ドル近く下落する事件が起きた。これは当時「フラッシュ・クラッシュ」と呼ばれ、誤発注やシステム障害が原因ではないかと指摘されたが、調査しても本当の原因はわからなかった。

 米国には株の取引市場が多数あり、上場株の取引分散化が進んでいる。電子取引の普及で株式の注文は数十カ所に分散されてしまう。電子取引は株式の注文を便利にしたが、同時に市場の仕組みを非常に複雑にした。この複雑性を自己売買に有利に利用している人たちがいる。超高速取引(ハイ・フリークエンシー・トレーディング=HFT)と呼ばれる、事前に決められているアルゴリズムを使って高速で大量の取引を行う業者のことである。

 超高速取引(HFT)は市場の出来高を増やし、売りと買いのスプレッド(開き)を縮めるので一般投資家にとってはよいことであると言われてきた。しかし、この本では大きな問題を指摘している。それはHFT業者による「フロントランニング」である。

ページトップ