朝鮮半島有事は「円売り」か、「円買い」か

リスクオフで円が買われる理由

田渕 直也
「安全通貨の円」とはどういう意味なのか、なぜ北朝鮮リスクの高まりで円が買われるのか

 朝鮮半島をめぐる緊張はいったん緩和しているが、依然として予断を許さない状況に変わりはない。これまでは、緊張が高まると“安全通貨”たる円が買われ、緊張が緩むと円が売られるという一般的なパターンをたどっている。だが、北朝鮮が暴発すれば日本は直接的に損害を被る立場にいる。

 なぜ、日本が当事者となる朝鮮半島有事のリスクが高まると「円買い」になるのか。もし実際に有事が発生すれば、今度は日本売りに伴う「円売り」が起きるのだろうか。

 一般に、リスクオフ(リスク回避)局面においては「安全通貨が買われる」という説明がなされる。だがこのロジックは、実にあやふやで誤解を招きやすい。そもそも“安全通貨”とはどういう意味なのか。この“安全通貨”を言葉どおりに「国力が安定し、リスクに動じない国の通貨」という意味にとらえてしまうと本質を見失ってしまう。

 何が起きるかわからない予測不能なリスクが高まると、投資家は何よりもリスクを削減しようとする。そのときに買われる通貨が“安全通貨”だ。では、なぜ円が“安全通貨”とされるのか。それは、それまで円を売っていた投資家が慌てて円を買い戻すからにほかならない。

 リスクを負っていない投資家ならば、リスクが高まったときには何もしないままのはずだ。すでに円売りのリスクを負っていた投資家だけがリスクを減らそうと円買いに動く。では、なぜ彼らは円を売っていたのか。その最も大きな要因は「円金利が半永続的に超低金利だから」である。

 超低金利が続く円で資金調達し、その円を売って他の通貨を得て、その通貨で運用するという投資パターンの存在がカギを握っている。その代表例はヘッジファンドの“円キャリートレード”と呼ばれるものだ。実は、こうした投資パターンは何も特別な投資行動ではない。たとえば円で負債を抱えている日本の保険会社や年金が海外の高金利を得ようとするとき、為替ヘッジなしの外債投資という行動をとる。これも十分に「金利の低い円で調達し、それを売って金利の高い他の通貨で運用する」投資パターンの一つである。

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