英国総選挙、前首相に続いての「賭け」が裏目に

与党・保守党が過半数割れ

松崎 泰弘
選挙結果を受け、イギリスのEU離脱交渉は混迷することが予想される

 英国のメイ首相は前任者と同じ轍を踏んでしまったのだろうか。

 8日に投票が行われた同国の総選挙(下院、定数650)は開票の結果、メイ首相率いる保守党が第一党の座を維持したが過半数の議席確保には至らず、いわゆる「ハング・パーラメント(どの党も過半議席を獲得できない)」の状態となった。選挙に打って出たメイ首相の進退問題に波及する可能性があり、欧州連合(EU)との離脱交渉への影響も避けられそうにない。

 保守党が苦戦を強いられた一因は、同党の公約が有権者の反発を招いたためだ。その一つが社会保障改革の一環として掲げた在宅介護費用の自己負担をめぐる提案である。英国の場合、医療費に関してはNHS(国民医療サービス)の下で原則、国が全額を負担するが、介護負担をめぐってメイ首相は住宅を含む資産額が10万ポンドを超えるケースでは自己負担とすることを打ち出した。

 これに対して、「高齢者介護に携わる50代以下の世代が“認知症税”などと猛反発」(大和総研ロンドンリサーチセンターの菅野泰夫シニアエコノミスト)。「介護負担を受けるためには家を手放さなければならないのか」といった批判につながり、大幅に開いていた保守党と労働党の支持率が縮まるきっかけになった。

 保守党は財政面でも緊縮策を掲げたのに対し、野党・労働党は鉄道・郵便・エネルギー企業の再国有化や大学の授業料無料化など歳出拡大の政策を公約としてブチ上げた。

 昨年の米国大統領選では、民主党の候補者選びで「公立大学の授業料無償化」などと打ち出したサンダース氏が若者の支持を集めて善戦。今年4~5月の仏大統領選では、急進左派のメランション氏が最低賃金の引き上げや高額所得者に対する課税強化など弱者に寄り添う姿勢を鮮明にした政策で、多くの若者を取り込むなど旋風を巻き起こした。財政緊縮策に反対する左派候補への支持拡大という世界的な流れが、労働党のコービン党首には追い風になった面もありそうだ。

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