「恐怖指数」の歴史的低下は何を意味する?

上昇継続か、嵐の前の静けさか

田渕 直也

 朝鮮半島情勢、米国の政権リスク、テロの頻発など不安材料が尽きない中で、世界の株式市場の変動率の低下が際立っている。

 下の図はVIX指数、すなわち米国S&P500のボラティリティ(予想変動率)指数の推移である。投資家の不安心理の大きさを示し、通称「恐怖指数」ともいわれているものだ。今年の7月に過去最低水準を更新した後、今月に入ってわずかに上昇しているものの、依然として低位にとどまっている。要するに、今の投資家は米国株式市場が波乱の展開となることをほぼ想定していないということになる。このVIX指数の低下をどのように捉えればいいのだろうか。

 見方としては大きく二つに分かれるところだ。第一は、金余りを背景とした投資家の投資意欲の高まりなど、構造的な投資環境の改善を反映しているという見方だ。そうだとすると、VIX指数の低下はさらなる株高を招く可能性が高く、なにか予想外のショックが加わってもすぐに回復しやすいということになる。たとえば、1993年にVIX指数は一時10%を割り込むほどにまで下がったが、それはその後数年にわたる株価の大幅上昇の前触れとなった。

 第二の見方は、VIX指数の低下は投資家がリスクへの備えを怠っている裏返しにすぎず、要するに今の市場の落ち着きは“嵐の前の静けさ”であるとするものだ。2006年末にVIX指数は10%を割り込む水準にまで下がったが、それがその後のサブプライムローンバブルの崩壊からリーマンショックへとつながる予兆となったことがその前例である。

 どちらの見方をとるべきか現時点では判定が難しいが、(1)長期金利の上昇リスク、(2)今年秋の共産党大会後の中国経済減速リスクなど、大きな潜在的リスクが顕在化する可能性は今のところ抑えられている。そのため、近いうちに相場が大きく崩れるような展開を想定することは難しいと考えられる。

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