「うつ病マーカー承認なら、黒字化にもメド」

HMT菅野隆二社長インタビュー

小長 洋子
体内の代謝物質の異常を見つけ出す網羅的代謝解析技術をもとに、さまざまな疾患診断に役立てようとしているヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ(6090)(以下、HMT)。現在開発を進めているうつ病バイオマーカーは世界初の客観的にうつ病を診断できるマーカーになるか。菅野隆二社長に聞いた。
かんの・りゅうじ●1950年秋田県生まれ。73年東京理科大学工学部卒。74年に横河・ヒューレッドパッカード入社、84年に横河電機に移籍。92年、横河アナリティカルシステムズ(HPとの合弁、アジレント日本法人の前身)営業本部長、97年取締役、99年社長。2007年HPと横河電機の合弁解消でアジレント・テクノロジー日本法人の副社長に就任するが年末に退任し、08年2月から現職。(撮影:今井康一)

ーーグローバル企業、アジレント・テクノロジー日本法人の前身、横河アナリティカルシステムズでは社長まで務められたのに、ベンチャー経営に転進されたのはなぜですか?

 前職では測定機などを販売する側ですが、慶應義塾大学のメタボローム研究所のことはできたときから知っていましたし、HMTが設立されたときには出資の話も来たくらいです。メタボロームのテクノロジーにはずっと興味があった。

 外資系の経営者からベンチャーに移ると収入も減りますし抵抗感がなかったわけではありませんが、チャレンジしてみたかった。前職では社長とは言っても外国の著名ブランドのオペレーションであって、本当に自分の実力かどうかはわからない。ゼロから経営者としてやってみたい、という気持ちがありました。

 当社の基盤技術であるキャピラリー電気泳動質量分析システム(CEーMS)は、慶應大学の曽我朋義教授が開発したのですが、彼は実は横河アナリティカルシステムズ時代の元部下でした。慶應大学で冨田勝先生や西岡孝明先生(現・奈良先端科学技術大学院大学特任教授)がメタボローム解析をやろうとしていて、曽我先生を招聘したのです。慶應大学のCEーMS第1号機もアジレントが寄付したものです。このように、HMTは創業当初から慶應大学やアジレントと密接な関係がありました。

ーー創業者は菅野社長ではないのですね。

 創業者は大滝義博博士です。今もバイオ・ライフサイエンスのベンチャーキャピタルを運営されています。面白い技術だからと先生方を口説いて設立した。当社がIPOを考えたときに、やはり専門の経営者が必要だと言うことになり、旧知の仲でもあり、お声がかかったというわけです。ただ、すぐには移れず、2年後、ちょうどアジレントでのミッションが一段落ついたところで、そろそろ来てくれないか、と。アジレントとしても顧客に社長を送り込むことになるので(笑)、円満に移れました。

 移った時は、キャッシュの限界などが目前に迫っており大変でしたが、ビジネスとして自分のできることはわかっていました。それで就任してすぐに「90日プラン」を提示して、この通りやるよと。

 まずは受託解析サービスをきちんとやる。それまではテクノロジーを医薬品会社などに提供して共同研究を行い、成果物が出れば特許をシェアし、実施権収入を得るという仕事をしていた。最初はうまくいったが、途中から利益を出せなくなった。それで、まずは収益を固めることを優先しました。社員はまじめで技術力の高い人たちばかり。ただ、ビジネスのやり方を知らなかった。ピュアなので、示した方針を疑わずにやってくれる。すぐに黒字になった。

 でも、受託だけでは成長性が限られます。投資家に対して大きな魅力を作らなければならない。手持ちのシーズの中から、バイオマーカーは「化けるモデル」になると考えました。

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