日立金属、省エネ対応品を武器に復活!

日立御三家の特殊鋼メーカー

山内 哲夫
成長中のネオジム磁石は国内シェアの5割を握りトップ

電気自動車(EV)が一般向けに発売された今年、エコカーの本命争いがついに本格化する。先行するハイブリッド車(HV)に対し、EVがどこまで追い上げるのか。どちらにも一長一短があり、行方は予断を許さない。HVならニッケル水素電池が、EVならリチウムイオン電池が伸びる。しかし、エコカー市場自体が拡大するのは必至であり、HV、EVのどちらが売れても伸びるとみられるのが永久磁石である。

自動車では、従来の電動パワーステアリングに加え、駆動モーターや発電機への適用で使用エネルギーの大幅削減とCO2排出量を抑制できる磁石の活用が進んでいる。そして現時点で最も有用とされるネオジム磁石で、国内市場の半数のシェアを握るのが日立金属だ。

競合するサマコバ磁石は高温でこそ強みを発揮するが、磁力はもちろんコストでもネオジム磁石に軍配が上がる。実際、サマコバ磁石は軍事用などに限られており、ネオジム磁石の独り勝ち状態となっていた。エコカー普及はその需要増加を後押ししているのだ。

日立金属はネオジム磁石のコア特許を持ち、信越化学、TDKに加えドイツ2社、中国5社など計11社へライセンスを供与。このどこが売れてもライセンス収入が入るドル箱となっている。

このネオジム磁石は、元々、住友特殊金属という会社が基本特許を持っていた。しかし、業績は伸び悩み、ITバブル崩壊後の02年3月期には31億円の営業赤字に転落。そこで、03年6月、同じ磁石事業を行っていた日立金属が住友金属の保有株を買い取ったという経緯がある。 

住友時代のネオジム磁石はIT家電向けが中心。その他の事業も足を引っ張っていた。それが、04年3月期からは電動パワーステアリングなど自動車向けに売り上げが徐々に拡大。今では日立金属の主力事業として成長を遂げることになった。

課題のレアアースも確保へ

ネオジム磁石の生産に必須のレアアースの確保にも着手している。中国が生産量の9割強を握るため、アドバンストマテリアルジャパンと住金モリコープ(現中電レアアース)と合弁で中国の河北省にレアアースの合金製造会社を設立。昨年末から本格稼働に入った。年内の早い段階で、中国で合金までにしたものを日本に入れていく予定だ。

レアアースは生産されていないだけで、中国以外の国でも埋蔵していることは確認されている。政府や商社を中心に米国やベトナムなどでの開発案件が浮上しており、将来手に入れられなくなるという不安は後退しつつある。

磁石の耐熱性を高める希少なジスプロシウムの確保も課題だった。これを改善させたのが、同社が昨年1月に特許登録したジスプロシウム蒸着拡散技術。これにより、ジスプロシウムの使用料を抑えられ、小型軽量化・高効率化がさらに進んだ。

残る課題は特許切れだ。米国での特許は2014年までだ。ただこの件に関して、持田農夫男会長は「ネオジム磁石の収益全体に占める特許の割合は2割程度まで下がっている」とコメント。特許切れが大きな打撃にはならないとの見方をしている。約1000件もの周辺特許も相次ぎ取得しており、対策には余念がない。

業績はV時回復へ

日立金属はコスト抑制の重要性も認識している。

「昨年はグループ会社を100社から60社にするなど、思い切ってしぼった。12月になって、生き残ることができたなと思えた」(持田会長)。

こうした大胆なコスト抑制策が奏功し、日立金属の業績は目覚ましく回復している。四半期の営業利益を見れば、期を追っての改善傾向が一目瞭然だ。昨年の1ー3月こそ178億円の営業赤字を出したが、7ー9月で黒字化を達成。10ー12月期には71億円の営業黒字となった。損益分岐点を大きく引き下げ、利益を生みやすい体質に転換していたところに、環境対応品の需要回復が重なり、高収益を生んだのだ。

日立金属の強みは、豊富な環境対応品の取り揃えにある。ネオジム以外でも、欧州などで多いターボ車向けの自動車部品であるハーキュナイトを展開している。同製品によりエンジンを小さくすることが可能となり、燃費を抑えることができる。欧州各国での販売支援策に加え、ユーロ5などの環境規制もあり、足元増加傾向の小型のガソリン車向けが伸びている。

また、中国、インドなど新興国向けに期待されるのが電力向けのアモルファス金属材料だ。エネルギー効率の向上に役立つため、需要は底堅い。さらに、復調している半導体向けにも商品がある。リードフレーム材や、液晶向け配線用のスパッタリングターゲット材が伸びており、原価低減と販売増のダブル効果で利益が膨らんでいる。高シェア品が満遍なく利益を生んで、今11年3月期の大幅増益は必至だ。

記事はオール投資執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

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