あみやき亭、お値打ち国産牛武器に焼肉市場を快走

国産牛の仕入れ、加工が最大の強み

「関東は珍しいもの好きな人が多い」(佐藤社長)ため、1頭から400~500グラムしか取れない希少部位も提供する

全国2万3000店舗、市場規模7000億円と言われる焼肉業界で、あみやき亭が独り気を吐いている。同業他社の既存店売上高は軒並み前年割れが続く中、あみやき亭の前2010年3月期の既存店売上高は前年比1・5%の増収を確保。単体ベースの売上高、利益は、外食不況下でも過去最高を記録した。快走は今11年3月期も続く。期初の会社計画の前年比既存店売上高は全社2.8%減だったが、4月実績は同6.8%増と早くも想定を超過。この勢いが続けば、会社予算の増収増益幅から上振れの可能性は十分にある。

あみやき亭は名古屋地区を地盤に、主力の焼肉「あみやき亭」と焼き鳥「美濃路」を全店直営で手掛ける(10年4月末時点、各111店舗、50店舗)。近年は岐阜県、三重県、滋賀県、静岡県などにエリアを広げる一方、08年3月には神奈川県に2カ所目のセントラルキッチンを設置し、関東圏にも出店を始めた。

「あみやき亭」が独り好調な秘訣は、輸入牛肉よりも旨味が高い国産牛を、スーパーで買って食べるよりも安く、“お値打ち“で提供している点。特に国産牛の提供では、他の追随を許さない。その差別化のカギは、「肉のプロ」たちの存在だ。

国産牛を唯一、本格提供

焼肉業界は「牛角」「安楽亭」「あみやき亭」がトップ3を占める。上位2社が使用している牛肉は、主に米国、カナダ、豪州、メキシコ、一部国産。その他個店を除き、下位のチェーンでも本格的に国産牛を提供しているところはない。

国産牛は輸入牛肉と比べ、肥育日数が10カ月程度長く、餌も良質な穀物で育てられるため脂の乗りが良い。しかし、仕入れルートが単一化されている輸入牛肉と違い、国産牛は卸業者が全国各地に散らばっている。「食肉の知識に精通していないと、足元を見られ、(卸業者に)規格を下げられてしまうケースもある」(佐藤啓介社長)。それが「あみやき亭」を除く焼肉チェーンが国産牛を本格使用出来ない最大の理由だ。

「肉のプロ」として国産牛の仕入れにあたるのは、全社員約300名の約1割に相当する30数名。彼らは食肉の展示会など全国で開かれる各種発表会などに出向き、長年培ってきたプロの目で鮮度、質を確かめてから仕入れを行う。加工面でも腕が光る。輸入牛肉はブロックで仕入れるため調理も容易だが、国産牛肉ではそうはいかない。「肉のプロ」たちは、規格、品質もバラバラな国産牛の切り方、提供する温度、調味料の研究など細かな試行を繰り返しながら、常に各店、同じ味を保つ工夫をしている。佐藤社長は元々名古屋の食肉会社「三河屋」の出身で、そこで45歳まで専務取締役営業本部長を務めた経験を持つ。会社創立時に引き連れてきた当時の部下たちが、「肉のプロ」の原型だ。「あみやき亭」の客単価は、割高なはずの国産牛を使用しながら2250円。豪州産を中心に使用する「牛角」の2800円と比べ、安い水準を保つ。

他社を尻目に既存店好調

その結果が業界水準を上回る来店客数、既存店売上高に結びつく(左㌻上グラフ)。日本フードサービス協会によると、外食業界の09年の全店売上高は1.5%減と6年ぶりに前年を下回った。既存店ベースではさらに落ちこみ、焼肉他社も同様のトレンドだ。その中で、旨さと安さを両立させた「あみやき亭」の全店売上高(09年4月~10年3月)は2.1%と好調を維持している。

あみやき亭は、採算面でも際だつ。原価率こそ業界平均の水準にとどまるが、販管費比率が他社より約1割も低い。その理由の一つが、店舗効率の高さだ。焼肉業界では珍しく食材加工をセントラルキッチン(愛知、神奈川の2カ所)で行うため、店舗の厨房スペースは全体の8~9%と、同業平均の3分の1以下。床面積90坪に対し客席210~220席と高い収容力を実現し、人件費負担を軽減させている。アルバイト人員の「多能工化」も、好採算の秘訣だ。ホール担当とキッチン担当など、従来別々だった役割を、一人の人間が横断的に担えるようにし、店舗の人員数の抑制を実現している。

今後、力を入れるのが、関東圏への出店拡大だ。09年11月、日本ハムの孫会社であるスエヒロレストランシステムを1円で買収し、本格進出の足がかりを築いた。スエヒロはレストラン「SUEHIRO」など29店舗を東京都西部・南部地区を中心に展開する。今期は在庫管理の見直しや肉を中心とした食材の共通化を進め、損益均衡圏へ浮上を図る。関東ではスエヒロに対する認知度の高さを生かし、「あみやき亭」ではなく、「スエヒロ館」というブランドでも試行的に出店する方針だ。

会社が掲げる中期目標は年商1000億円と、上場前に達成していた経常利益率15%(前期は10.8%)への復帰だ。出店は営業キャッシュフローの範囲内で借入金ゼロ、と財務体質は健全。さらなるM&Aで年商1000億円の達成は可能だろう。課題のスエヒロ再建が進めば、経常益率15%の早期達成も視野に入る。「肉のプロ」たちが支える希少なビジネスモデルが、さらに本領を発揮する局面が到来しよう。

記事はオール投資執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

記事中の会社を詳しく見る

あみやき亭 (2753)

ページトップ