ユニ・チャームの快進撃が止まらない

海外進出で成長する吸収体メーカー

島田 知穂
中国では紙おむつを売る量販店の出店が進む

紙おむつ、生理用品の不織布吸収体メーカー国内首位、ユニ・チャームが快進撃を遂げている。

デフレによって日用品メーカーが軒並み苦戦した前2010年3月期、ユニ・チャームは5期連続で過去最高の売上高、営業利益を更新。今期は、7月末にペット用品子会社の合併に伴う費用計上を理由に、通期予想の下方修正を発表したが、それでも前期の実績は更新しそうだ。この好調な業績を支えているのは、売上高の4割弱を占める海外だ。

前年度はインド、インドネシアなどアジアを中心に海外進出以来最多5か所に工場を建設。最重要地域と定める中国でも、世界最大規模の上海3番目の工場を設立した。中国の売上高は前期比33%増と急伸長を遂げ、その勢いは今期も続いている。

拡販と現地生産による効率化で、営業利益率は年々改善。08年3月期にアジアの利益率は国内を超え、いまや全地域の牽引車だ。内需依存傾向の強い国内の日用品メーカーの中で、いち早くグローバル化を進めたことが、見事に功を奏している。

照準は急成長の中国

GDP(国民総生産)が年1000ドルを超えると生理用品が、3000ドルを超えると子供用紙おむつが売れるーー。80以上の国と地域に進出してきたユニ・チャームが経験測で編み出した基準だ。中国では北京、上海など沿岸部の大都市だけでなく、内陸部でもこの指標をクリアする都市が増えてきた。08年度から09年度にかけて参入した都市の数は1.5倍に拡大。今期も同ペースで進出都市を開拓していく計画だ。

一人っ子政策の中国では、子供に惜しみなく投資する家庭が多い。それを経済成長が後押しし、紙おむつの普及率は右肩上がり。使用対象の幼児の人口は日本の11倍と言われており、紙おむつメーカーにとっては魅力的な市場だ。

ユニ・チャームが中国に進出したのは91年。生理用品での参入だった。子供用紙おむつは2000年と遅く、P&Gや大手衛生材料メーカー、キンバリークラークなどのグローバル企業がすでに市場を押さえている。そこで目下、ユニ・チャームは他国で成功を収めてきたブランド戦略で、先行する競合に勝負を挑んでいる。

まずは高単価ながらも、富裕層向けの高機能な紙おむつで参入する。積極的に広告費や販促費をかけて、「あこがれのブランド」としてのイメージを消費者に植え付ける。そして、同ブランドから技術面では多少劣るが割安な中間層向けの商品を投入。一気にシェアを奪い取る。

この戦略が最も成功した地域はタイとインドネシア。タイでは参入してから、わずか2年半で先行企業を追い抜き、トップシェアに躍り出た。インドネシアでは、外資大手だけでなく、価格訴求の現地企業に対抗し、中間層向けよりも一段と安い紙おむつを投入。前年度は売上高42%増の急成長し、ここでも首位の座に就いている。

アジア各国では快走するが、中国ではいまだシェア第3位のユニ・チャーム。4月に中間層向けの製品を投入し、シェア拡大を図っている真最中だ。今後いかにライバルとの差を縮められるか、腕の見せどころだ。

中国でのシェア首位はケタ外れな資本力を持つP&G。P&Gは大規模な投資をして消費者調査を行い、現地のニーズを把握する。一方、ユニ・チャームは消費者宅を社員が一戸一戸訪問し、どのような生活をしているのか地道に検証。日本の製品を基本にしながらも、湿気が高く幼児の肌がかぶれやすい地域では通気性を改善するなど、細やかな現地の声を商品開発に活かす。どの国であっても厳しい母親の要求にかなうように、現地化を徹底する。

昨今、急成長をとげているのはシェア第2位の中国の現地メーカー、恒安国際集団(ハンアンインターナショナル)だ。低価格な値段設定を武器にP&Gを猛追している。

そこでユニ・チャームも、インドネシアと同様に、4月に投入した中間層向けの製品から、さらに価格を下げた製品を近々投入することを決定。「P&Gや恒安に比べれば進出地域が少なく、差をつけられている。しかし低価格の紙おむつの投入で、依然として大きな成長余地はある」と高原豪久社長も自信を見せる。

ユニ・チャームの中期目標は、現在6%の不織布吸収体の世界シェアを10%まで高めること。世界シェアは、P&Gが3割、キンバリークラークが2割。第3位のユニ・チャームは水をあけられているのが現状だが、中国での伸長をテコに、さらなる成長を虎視耽々と狙っている。

海外成長頼りの脱却図る

好調な海外に対し、国内の子供用紙おむつ事業は縮小が続いている。少子化にデフレも相まって、前期の売上高は前期比86%と下落した。

しかし、ユニ・チャームは国内を諦めたわけではない。今期は一転、国内の子供用紙おむつでも、新製品を投入して増収を見込む。新製品は12年もの歳月を費やして開発した素材を使った自信作だ。高原社長は少子化とデフレが続く中でも、子供用紙おむつだけで08年3月期の水準まで売り上げを戻すと豪語。高齢化で需要が拡大している大人用紙おむつや軽度失禁用品も順調に推移しており、「アジアの成長だけに頼っているよりも、安定感がある」(国内証券のアナリスト)と好評だ。

紙おむつや生理用品など得意分野で勝負し、そのブランド戦略で他社を圧倒してきたユニ・チャーム。今後もニッチな専業メーカーとしての強みを発揮して、着実な成長を続けていきそうだ。

記事はオール投資執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

 

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