個人投資家に倫理観はいらない?

グリー相場の終焉と投資家の倫理観

岩本 秀雄

尻馬に乗って大声をあげるつもりはないので、正直に告白しよう。

その昔流行ったインベーダーゲーム(攻めてくるUFOを撃ち落すアレ!)で高得点を出した記憶がない。学生時代はゲーム喫茶に頻繁に通ったつもりだが、運動神経の問題なのだろうか……。パネルゲームでも、当時小学生の息子に歯が立たなかった。

そのため、それ以降に人気となった『スーパーマリオ』や『ファイナルファンタジー』シリーズなどのゲームとは関係なく生きてきた。最近話題の「リアルマネー・トレード」や「コンプリートガチャ」という言葉は、新聞報道で初めて知ったほどだ。

だから、私には今回のSNS関連株を襲った“ガチャ・ショック”について、その背景や今後の展開を語る資格はない。しかし、これまでの相場経緯を振り返ると、株価チャートが極めて有意なシグナルを発していたことがわかる。

グリー(3632)の週足チャートを見ていただこう。

まず、2012年年明け後のアイテム課金に対する規制観測報道で、株価はそれまでの上昇トレンドラインを下抜け、一気に26週移動平均線も突き抜けてしまった(=①)。この段階での「トレンド転換」との判断はチャート分析の定石だ。

次に、グリーの田中良和社長を中心に自主規制の動きが出たことで株価は反発するが、急落前の水準で戻りいっぱい(=②)。今度は、リアルマネー・トレード(ゲーム内アイテムなどを現金で売買すること)問題が表面化する。規制協議会が設置された時の株価は、問題発覚後の最安値水準となった(=③)。前回株価を下支えた26週線が、今度は戻りの頭を押さえてしまう(=④)。そして、今回のコンプガチャの社会問題化(=⑤)。

以上のように、この10カ月間の株価を鳥瞰すると、三尊天井(大相場が天井を打った時に現れる典型的なパターン)に近い形だ。もちろん、その天井形成にも曲折があるが、「その途中で折々に現れるシグナルに気づいていれば」と、今になって悔やんでいる投資家も多いのではないだろうか。

利益か倫理か

実は、私は1月下放れの段階で「相場はいったん終わり」と、テレビ番組の中で断定した経緯がある。その根拠は、アイテム課金問題。ユーザーは武器となるアイテムを現金で購入することができ、それによってゲームの展開を有利に進めることができる。この仕組みは、言ってみれば「カネさえあれば、何でも手に入る」という感覚に近いのではないか。これではゲームのルールも勝敗も、何もあったものではない。

以下は、あくまでも個人的な主観として述べる。「何も知らない子供たちが犠牲になる」という反対者たちの主張にも違和感があるが、それ以上に、倫理観感が欠如しているかのようなビジネスモデルに反発の気持ちを抱く。利益追求の世界とはいえ、企業経営者にも、そして投資家にも倫理観があっていいはずだ。

それにしても、グリーのチャート。極めて“意味深長”ではないか。

講師=岩本秀雄(いわもと・ひでお)/ストックボイス副社長。日本証券新聞編集局長などを経て現職。30年間、激動の株式市場を見続けてきた。

※記事はオール投資執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

記事中の会社を詳しく見る

グリー (3632)

ページトップ