昭和シェル石油、動き出す海外大工場計画

子会社IPOも視野に、太陽電池で大攻勢

中村 稔
主力の宮崎県・国富工場。太陽光吸収層など心臓部の薄膜加工工程は、独自開発した装置で完全自動化。カイゼン活動も徹底的に行う

昭和シェル石油の100%子会社で太陽電池事業を担うソーラーフロンティア(SF)。2006年9月の設立以来、深刻な赤字経営が続いていたが、昨年7月の再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)導入を機に業績が急改善。今13年度(12月期)は100億円強の営業利益を見込み、初の黒字転換が確実となってきた。

崖っ縁からの生還 フル操業続く太陽電池

年間生産能力900メガワット(MW)。太陽電池モジュールの一貫工場として世界最大級の国富工場(宮崎第3工場)では、今年に入ってから24時間、定期点検を除き休日なしのフル稼働が続く。FIT導入前の稼働率はせいぜい5割強だった。7月には昨年末から休止していた第2工場(同60MW)を再稼働。それでも受注に生産が追いつかない。今は来年後半出荷分の商談を行っている。

出荷先も一変した。FIT導入前は海外が7割で、国内の大部分は住宅用だった。それが今や国内が9割で、メガソーラーを含む非住宅(事業)用が大半を占める。非住宅用はFITが初の優遇策であり、電力会社による買い取り価格も高めに設定されたことから、メガソーラーの参入ラッシュが巻き起こったためだ。

昨年まではSFの先行きを危ぶむ声が多かった。第3工場の生産開始は11年2月。それまでは第1、第2合わせて80MWしかなく、後発で存在感は薄かった。それが、1000億円もの巨費を投じて一気に世界最大級の工場を建てたのだから、業界の多くが「無謀」と受け止めた。

しかも、船出の環境が悪かった。第3工場は、太陽光発電の普及で先行する欧州など海外市場への輸出拡大を狙ったものだった。ところが、11年は1ドル=70円台、1ユーロ=100円接近の超円高。欧州では債務危機の影響に加え、ドイツなどがFITの上限価格を下げたために需要も収縮。その中で生産拡張を続けた中国メーカーなどが在庫の投げ売りを始め、太陽電池の市場価格は1年足らずで半値に暴落した。

SFも11年度に323億円、12年度に146億円と純損失が続き、自己資本比率は6%まで落ち込んだ。もしFIT導入が1年遅れていたら、増資なしには債務超過を免れなかっただろう。

結果的にSFの業績は急浮上し、昭和シェルの連結業績も改善している。同社の事業は石油(石油精製と石油化学)とエネルギーソリューション(ES、太陽電池と発電)の2本柱。13年度の連結営業益は770億円で、07年度以来の高水準となる見込み。石油事業の在庫評価益の影響もあるが、前期154億円の営業赤字だったES事業が160億円の黒字に転換する効果が大きい。その改善の立役者が太陽電池事業だ。

もちろん、FIT効果を謳歌しているのはSFだけではない。モジュール出荷量で国内最大手のシャープ、2位の京セラ、SFに次ぐ4位のパナソニックなど軒並み同事業の収支が急回復している。

なにしろ、13年の日本全体の出荷量は5.7ギガワット(GW=1000MW)と前年比3倍以上に急増する見込み(調査会社NPDソーラーバズ社の予想)。世界の出荷量の17%を占め、国別では昨年の5位から中国に次ぐ2位へ浮上する。しかも、FIT導入後1年間の太陽光発電の設備認定容量は21GWに達しており、太陽電池の需要は今後少なくとも2~3年は高水準が続きそうだ。

価格もFIT導入後は底堅さを見せる。「今年春先に中国大手のサンテックが破綻したことで、日本製に対する信頼性が向上。シャープの経営難もあって、国内ではさほど激しい価格競争になっていない」(業界筋)。国内のモジュール平均卸価格は今年はほぼ横ばいで、世界平均に比べ1~2割高い状況が続く。

FITは15年が転機 海外再進出が課題に

問題は、好調な業績が中長期的に続くかだ。FITでは再エネ普及のため当初3年は設備導入者の利潤に配慮し、買い取り価格が高めに設定されている。だが、15年4月以降は優遇策が切れる。買い取り価格が大きく下がればメガソーラーブームは収束し、太陽電池の需要は減退、利幅の低下圧力も増す。業界の“わが世の春”も終わりを迎えかねない。

「16年以降は大型のメガソーラーが大きく減り、日本市場が冷え込む可能性はある」と玉井裕人・昭和シェル副社長兼SF社長。では、どうするか。「住宅用や(中小の)工場の屋根・敷地向けを強化するとともに、日本市場がピークアウトする前に再び海外に出ていく」(同)。

住宅用は大型の事業用に比べ、部材メーカーにとって採算がいい。が、その住宅市場でもいずれ競争は激化し、国内需要全体も数年内にはピークを打つだろう。一方、海外では新興国を含めて長期的に市場拡大が続く見通し。事業の成長持続には、再度海外に軸足を戻すしかない。ただ、海外に出るとなれば、中国、米国勢など生産・出荷量で圧倒するライバルの迎撃は必至。厳しい戦いは避けられない。

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