パナソニック「10年の計」、三洋買収でついに始動

ポストデジタル家電の“飯の種”

西澤 佑介
太陽光、蓄電池、省エネ家電を1つのモデルハウスに揃えたパナソニックの「エコアイディアハウス」

三洋電機の買収が昨年末完了し、新生パナソニックがついに本格始動する。総合電機同士で初の画期的M&A。三洋買収を織り込んだ具体的な事業計画について、会社側はまだ明かしてはいない。

が、パナソニックが追うべきビジネスモデルの転換は、三洋電機を取り込むことでより明確になった。価格競争が激しい家電の単品扱いから、顧客の要望に応じて複数の家電製品をパッケージ化し販売する形へのシフトだ。同社が呼ぶところの「ソリューション」ビジネスである。

成長ドライバーとしてのデジタル家電時代の終焉

今10年3月期は、パナソニックにとって中期経営計画「GP3」の最終年度に当たる。しかし、その進捗度合いは決して満足できるものではなかった。「過去3年を振り返ると、やはりわれわれの予想以上に、韓国系などに大きな差をつけられてしまった」。昨年10月の中間決算の席上、大坪文雄社長はこう吐露した。

ウォン安、円高といった為替要因は確かにあった。だが、より根源的な要因は、主力のデジタル家電を取り巻く環境激変にある。デジタル家電のコモディティ化が進み、成長市場は新興途上国に移った。量販店での値下げ競争も激化し、低価格の中国・韓国系が相対的優位となったのも事実だ。パナソニックの営業利益率は過去10年で最高時でさえ5%台、現在はたったの1%だ。世界同時不況を考慮に入れても、3年前に掲げていた10%からは程遠い。

大和証券キャピタル・マーケッツの三浦和晴アナリストは、「成長ドライバーとしてのデジタル家電の時代は終わった。今後10年を生き残るには、新しい成長の形を見つける必要がある」と警告する。

三洋買収による未来図を描く前に、パナソニック自身がやらなければならないことがある。家丸ごと、ビル丸ごと供給できるほど広範囲な電気機器を取り扱ってきたパナソニックだが、それらを組み合わせて一括販売することに関しては、意外にも不得手だった。

たとえば、業務用機器部門で作っていたカメラと固定通信機器部門で作っていたカメラは、同じパナソニック製にもかかわらず相互に接続できなかった。販売窓口も部門ごとにタコツボ化され、同じ法人顧客にAV、照明、空調など各部門がバラバラで営業するなどの問題があった。

原因の一つは、03年に移行した全14事業部門の社内分社体制にある。狙いであった各分社ごとの経営責任の明確化と製品力強化にはある程度奏功したものの、各分社間の横のつながりは逆に希薄になっていた。

このタコツボ化問題を緩和し、ソリューション型営業に舵を切るため、同社は昨年「システム・設備事業推進本部」を設立した。ここが大手法人顧客の対応窓口を担うとともに、自社製品をパッケージ化した商品企画を行っている。具体例として現在、国内ホテル大手と共同で通信機器や警報機器、カメラなどを組み合わせた防犯パッケージシステムの企画を進めている。ほかにも学校用、店舗用などに専用のシステム製品を実用化することも検討している。

エネルギー、環境ソリューション型へ舵

パッケージ化のメリットは、家電単品販売では日常茶飯事だった量販店の値引き競争を回避できること。さらに、顧客へのコンサルティングや保守・サービスで付加価値を積み増すことができる。収益構造を一変させる可能性を秘めているのだ。

このソリューション事業戦略を考えるうえで重要な先例となったのが、1990年代における米IBMの体験だ。主力製品だったメインフレームのビジネスが陳腐化し収益が急落、倒産すらささやかれたIBMが復活したカギも、ソリューション型への転換だった。

93年に同社CEOに就任したルイス・ガースナーは、ハードウエア単品の製造を行う事業から、付加価値が高く顧客に応じて各製品を組むシステム構築に保守・サービスを組み込んだビジネスモデルへ軸足を移した。結果、業績は好転し、IBMの株価は経営危機時の水準の約10倍にハネ上がった。

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