銘柄選びで大きく差がつく 新・株式投資のツボ

優良企業でも株価は上昇しないことがある

株式市場は9月に入って騰勢を再び強めてきた。日経平均株価は8月28日から9月20日までの約3週間で1600円強も上昇し、1万5000円に迫った。ただ、5月にかけての「アベノミクス」相場では、株と名がつけばほとんどの銘柄が一斉に上がったのに対して、今回の上昇局面では、値上がりする銘柄と値動きの重い銘柄に二極化している。丁寧な銘柄選びが求められる相場であるともいえそうだ。

4~6月期のGDP(国内総生産)成長率は9月の改定で年率3・8%に上方修正され、速報値ではマイナスだった設備投資までプラスに浮上。カネ余りによる「金融相場」から個別企業の実力を買う「業績相場」への移行が本格化しようとしている現状を裏付ける結果となった。今後の相場上昇に乗るには、景気拡大期の株価や経済指標の推移を押さえる必要がある。

図に示したように、景気拡大初期に他業種に先行して上がるのは金融関連株だ。金融緩和政策による余剰マネーが株式市場に回ってくるため、証券株が率先して高値を追うほか、銀行株も調達コスト低下という短期要因と将来の融資採算の向上という長期要因から値上がりする。保険、ノンバンクも人気化し、広義の金融株全般が景気拡大を先取りする形で買われる。

平成バブル期の1989年12月には、ほかのどの景気指標よりも早く日経平均がピークを迎え、金融株主導の大相場に沸いた。ただ、株価上昇に続いて実体経済が好転しなければ、カネ余りが生む「不景気の株高」に終わることになる。

建設株は五輪で上昇 安値で買うのは困難に

次に、株価上昇にやや遅れる形で長期金利が上昇する。主な要因は設備投資などによる資金需要増大と、物価上昇の先取りの両方だ。鉄鋼や化学といった設備産業が投資を増やす可能性があるのもこの時期で、設備投資を伴う強気の事業計画が株価を刺激する。また、金利とともに不動産株も本格的に上昇し、大手ゼネコンなど建設株が増益期待から買われる。ただ、建設株は今回、東京五輪によるインフラ整備を材料に、定石よりはるかに早い段階で株価が持ち上げられており、安値で仕込むのは現実的には難しそうだ。

景気の強さが試されるのは個人消費の回復ぶりだろう。小泉政権による不良債権処理を原動力とした2008年2月までの73カ月にわたる景気拡大(いざなみ景気)では、株高から地価上昇までのルートが開通したが、個人への恩恵は乏しく「実感なき景気回復」といわれたものだ。

物価が下落基調から抜け出し消費が本格的に上向く頃には、家電や自動車など耐久消費財の売れ行きもよくなっている。金利上昇に背中を押される形で個人の住宅取得も熱を帯びてくる。もっとも、就労人口減少による国民の購買力低下は根強い物価下落圧力として作用するとみられる。バブル期の91年でさえ消費者物価指数は年3.3%の上昇にとどまっており、増税分を除いた実質的な物価上昇率は日本銀行が目標とする2%付近が上限かもしれない。

景気回復の最後の仕上げは雇用。世界的にも雇用は景気の遅行指標とされ、景気回復を確認するリトマス試験紙として重視される。理屈は単純で、企業で人手が足りなくなると、当面は残業や雇用延長などで対応し、それでも足りない場合にようやく求人に乗り出す。派遣など非正規雇用が中心になるにせよ、不況期に労働市場から締め出された人にも仕事が回り、結果として所得の底上げが起こるため、スーパーなど薄利多売型の小売業も業績が本格的に上向くことになる。

このように、業種によって好景気の恩恵が波及する順番があるので、実際の景気や業績動向にやや先回りする形で投資銘柄を選択するのが有利だろう。

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