欧州金融危機、「リスクオン」はまだ早い

今度はフランスなど中核国に変調

鈴木 雅幸

ユーロ圏経済の回復ペースが依然弱い。アイルランドなど債務危機国が下げ止まりを見せる一方で、フランスなど大国の経済が伸び悩みを見せているからだ。ECB(欧州中央銀行)は12月5日の理事会で追加緩和を見送ったものの、2014年の物価見通しを下方修正、15年も1%台のディスインフレが続くとしている。

2013年のユーロ圏全体を振り返ると、ギリシャ危機以後の市場の混乱が回避され、1年半にわたる景気後退からようやく脱した段階だ。しかし、その回復ペースは心もとない。13年Q2(4~6月)、Q3(7~9月)の実質GDP成長率は前四半期比でプラス成長に浮上したものの、その水準は0.3%増→0.1%増と低下傾向にある。個人消費など内需の悪化が止まってきたが、輸入の拡大もあって輸出に勢いがなくなったことが大きい。景気後退局面で落ち込んだ輸入の伸びは経済活動の正常化の表れとの評価もある。ただ、内需がまだ頼りない中では、輸出が今後どの程度伸びるかがユーロ圏経済の回復のカギを握っている。

足元のユーロ圏経済を国別で見ていくと、「13年は域内における景気の方向性や経済活動の水準のバラツキが残った」と指摘するのは、ニッセイ基礎研究所の伊藤さゆり上席研究員。EUやIMFの支援を受けたアイルランドやポルトガル、そしてEUから銀行支援を受けたスペインの成長率は直近の四半期でプラス成長に転じている。ギリシャは依然マイナス成長だが、その幅は縮小された。一方で今年5月に3年間のEU・IMF支援プログラムが始まったキプロスは、直近9四半期にわたってマイナス成長が続いている。

フランスが変、オランダも冴えない

そんな支援国の変化とは別に、同氏が注目するのは中核国や財政健全国の動向だ。財政赤字の削減が進まないフランスは4~6月期にプラス成長に転じたが、7~9月期に再びマイナス成長に戻り、失業率も依然高水準。不動産バブルの崩壊と財政緊縮の影響が続くオランダは、景気後退が止まったものの回復ペースは鈍い。イタリアも自力で危機を乗り切ったが、銀行部門のバランスシート調整の影響もあって8四半期にわたりマイナス成長が続き、直近はゼロ成長にとどまった。「債務危機国は下げ止まったが、ドイツ、オーストリア以外の中核国や、フィンランドなど財政健全国のパフォーマンスが冴えない」(同氏)と指摘する。

ECBは5日の理事会で追加緩和は見送ったが、ドラギ総裁は記者会見で「ECBには多様な政策手段が残されており、必要があれば追加緩和を行う準備ができている」と語った。そのうえで、14年の物価見通し(中央値)を9月時の+1.3%から+1.1%に下方修正し、15年も+1.3%とディスインフレが続くと予想、追加緩和の必要性の判断を来14年に持ち越した形だ。また、追加緩和のオプションも長期オペ(LTRO)再開の可能性を示唆した。すでにECB内では、BOE(英国中銀)のFLS(貸し出しを増やした金融機関に対しては有利な条件でBOEが資金供給する)方式を検討し始めている。

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