焦点:米緩和縮小、新興国に改革促す「苦い良薬」となる可能性

棚上げしてきた改革の実行で新興国市場の再生も

1月3日、新興国にとっては、米FRBの量的緩和縮小に伴って自国市場が混乱したり大規模な資金流出が発生する事態に際して、「良薬は口に苦し」という考え方が慰めとなるかもしれない。写真は2012年、ワシントンで撮影(2014年 ロイター/Yuri Gripas)

[ロンドン 3日 ロイター] -新興国にとっては、米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和縮小に伴って自国市場が混乱したり大規模な資金流出が発生する事態に際して、「良薬は口に苦し」という考え方が慰めとなるかもしれない。

今月から始まるFRBの緩和縮小を受け、新興国市場から外国投資家の資金が引き揚げられようとしている。これは特にインドやトルコといった、対外支払いの不足分を外国からの資金流入に依存する経常赤字国にとっては打撃になる。

一方で米緩和縮小がもたらす情勢の急変が新興国の政府による改革の実行を促し、最終的に国際的な資金移動に左右されにくい経済を確立することが期待される。

UBSのストラテジスト、マニク・ナレイン氏は「政策担当者は棚上げしてきた改革の実行を迫られる。米緩和縮小は少なくとも、そうした話を先に進めようとしている。改革実現を見込んだポジションの構築は時期尚早だが、改革が行われれば新興国市場の再生が始まるだろう」と述べた。

FRBによるこれまでの量的緩和は、新興国にとっては痛しかゆしの面があった。記録的な低い借り入れコストと株式や債券への多額の投資が経済成長をもたらしたが、こうした緩和マネー流入で大半の国は労働市場改革や民営化、生産性向上、電力・交通インフラの整備といった取り組みから目を背けてきた。だがこうした分野で前進することこそが、製造業やサービス業に長期的な投資を呼び込む鍵となるだろう。

<インドとメキシコが先行>

過去に起きた新興国の危機、例えば1991年のインド、1994年のメキシコ、1998年のロシア、2001年のトルコなどにおいては、経済構造の転換をもたらした改革が実現した。

そして今回の場合、先行者の地位にあるのはインドとメキシコだ。インドは、政策をめぐる混乱や経常赤字問題のために投資家から攻撃された結果、財政赤字縮小や一部の補助金削減、エネルギー価格引き上げなどに動き始めた。今年半ばに予定される総選挙後に改革が実施されるとの期待から、通貨ルピーは2013年半ばにつけた過去最安値から11%上昇している。

メキシコは、エネルギー改革を進めたことで13年の通貨ペソの対ドル相場は1.6%安と、他の中南米通貨が10%安になったのに比べて小幅のマイナスで踏みとどまった。

しかし新興国全般でみると、一連の選挙を前に不人気な改革に取り組む意欲は弱まるだろう。またロシアや南アフリカは、それぞれ主要輸出産物の原油と金属の価格が堅調なことが、改革案の実行を阻む要因となる可能性がある。

バークレイズの東欧・中東・アフリカ(EEMEA)責任者、クリスチャン・ケラー氏は「(米緩和縮小がもたらすボラティリティが)一部の国において改革を促進している。だが新興国全域ではないのは確かだ」と話す。

キャピタル・エコノミクスは顧客に対して、新興国の政策担当者はサプライサイドの改革に着手する好機を得たとの見方を伝えながらも、各国の現政権が人気取りの支出計画を推進して再選の可能性を高めようとして、経常赤字を一層拡大させていることへの懸念も表明した。

<早期の米緩和終了はプラス>

あらゆる可能性や長期的な観点を加味すれば、早急に量的緩和を打ち切るというのは恐らく、新興国にとって悪いことではない。

ブラジル中央銀行のトンビニ総裁が最近、米金融政策の「正常化」について「全体としてみればプラス」と評価した上で、緩和縮小は早ければ早いほど良いと発言したことは、多くの新興国の政策担当者の声を代弁したといえるだろう。

これは当然だ。FRBの量的緩和は新興国の中銀当局者にとっては頭痛の種であり、支出や借り入れを膨らませ、不動産バブルや通貨インフレを発生させた。

その結果、国内の金利はファンダメンタルズで正当化されるよりもずっと低い水準まで切り下げられ、経常赤字は拡大。例えばブラジルの経常赤字の対国内総生産(GDP)比率は2009年9月時点で1%だったのが、3.5%になっている。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチでEEMEAの債券戦略と経済分析の責任者を務めるデービッド・ホーナー氏は、米緩和縮小が遅れるほど、不均衡は大きくなると警告する。

さらにホーナー氏は、米緩和縮小が進むにつれて市場は新興諸国それぞれ固有の要因に着目することで、改革を進めている国に報いる一方で、改革が遅れている国に罰を与えやすくなるとみている。

同氏によると、新興国市場にとって最良の展開は、FRBが量的緩和打ち切りに向かって米国債利回りが3.50%程度まで上昇し、改革に取り組もうという動きが出てくることだという。

(Sujata Rao記者)

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