本マグロの初競りから学ぶ新興株市場との付き合い方

需給がファンダメンタルズを凌駕するのは同じ

2013年の大納会には同年にIPOを果たした会社のトップも多数出席した。(撮影:梅谷秀司)

 新年早々、おとそ気分も吹き飛ぶような急落から始まった日経平均。干支別で最もパフォーマンスの悪い午年だけに、何だか心配な出足だ。ただ、そんななかでも新興株市場は堅調。日経ジャスダック平均、東証マザーズともに大発会は続伸で始まった。

 とりわけ活況なのが「直近IPO(新規株式公開)」銘柄の一角だ。昨年12月9日上場のホットリンクは、翌10日の初値7170円に対して、1月6日終値は2万3700円と、わずか15営業日で初値比約3.3倍になった。12月18日上場のシグマクシスも初値3020円に対して1月6日終値は7430円と9営業日で同2.5倍。そのほか、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズブイキューブメディアドゥなどが快調に値を飛ばしている。

 東証マザーズの売買代金上位でいえば、昨年の常連だったミクシィアドウェイズが大発会もワンツーフィニッシュ。直近1カ月の上昇でいえば、何といっても日本マイクロニクスだろう。1月6日終値は6260円。1カ月で株価は4倍近い水準に達した。この間、ほぼ「2日に1回」のペースで値幅制限上限のストップ高まで値上がり! 昨年11月に発表した新型2次電池の量産化技術開発がいまだ買い手掛かりになっている。

 売買が際立って多い銘柄や値を飛ばしている株に共通するのは「超割高感がある」という点くらいだろうか……。とはいえ、これこそが新興株市場であり、珍しい現象というわけでもない。ミクシィは今期赤字見通し、アドウェイズは予想PER200倍台でも商いは多いし、ホットリンクは予想PER700倍弱でも買い優勢である。

 PERは人気を図るバロメーターであり、「高い=人気がある」でもあり、人気がなくなれば強烈に低下するものでもある。「直近IPOだから」という理由で意地になって吊り上げられたような株価も、「直近IPOではなくなったから」という理由で想像を絶する下落につながるものだ。

 この教訓を噛みしめておきたい事例が、今年の本マグロの初競りだ。青森・大間産の本マグロは昨年、「初モノで縁起がいい」という理由から1億5540万円で競り落とされた。これに対して、今年の初セリ価格は736万円。価格は前年の21分の1だったが、それでも専門家は「今年ぐらいが適正な価格」と指摘していた。マグロの初競りと比べれば株式市場の参加者は圧倒的に多いが、似たような現象は新興株市場でも起きているのではないかと感じる。

 株もマグロもオークション方式、需給がファンダメンタルズを凌駕してしまうものだ。とはいえ、株については最高値で競り落としても誰も賞賛してくれない。「最高値で買ったら負け」、これを念頭に置いた新興株市場の壮大なチキンレースは今年も幕を開けた。

(おしまい)

(毎週火曜日に掲載)

株式コメンテーター・岡村友哉
株式市場の日々の動向を経済番組で解説。大手証券会社を経て、投資情報会社フィスコへ。その後独立し、現在に至る。フィスコではIPO・新興株市場担当として、IPO企業約400社のレポートを作成し、「初値予想」を投資家向けに提供していた。

 

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