いいとこ取りファンド 私募REIT急成長

不動産投資の新たな担い手

オフィスビルなどからの賃料収入で配当するファンドの新形態、私募REITが人気に

不動産投資の新たな担い手として存在感を高めているのが私募REIT(不動産投資信託)だ。2010年に第1号が登場して以後3年で20倍超に拡大した(図)。

私募REITの特徴は、「いいとこ取りをした不動産ファンド」。証券取引所に上場しているJーREITと、上場していない私募不動産ファンドの、デメリットを除きメリットをハイブリッドしたものだ。

JーREITは、市場で日々価格が付くので価格変動が大きいというデメリットがある。年金基金などの長期投資家は、価格が急落しているときに決算期末を迎えると、巨額の評価損を計上しなければならず、大きな価格変動は好ましくない。一方、私募不動産ファンドは、鑑定評価に基づく価格づけが年2回程度しかないので価格変動は小さい。

しかし、私募不動産ファンドには運用期限というデメリットがある。不動産市況が悪いときに期限を迎えると、損が出ても売却しなければならない。その点、JーREITには期限がないので、市況が悪いときは売却しなくてよい。

そこで「私募REIT」は、価格公表を年2回程度として価格変動を抑え、運用期間を無期限とした。

資産が最も大きいのは三井不動産プライベートリート投資法人。「14年3月までに1700億円に達することが見えてきた」(三井不動産投資顧問リート運用部の祖父江元樹マネジャー)。資金の出し手は年金や地方銀行、信金など。メガバンクや生損保も主要投資家だ。投資先は主に三井不動産グループから取得したオフィスビル、賃貸住宅など。分配金利回りは4%以上と、最近のJーREITより高い。13年7月に300億円の増資をしたときは倍の約600億円もの応募が集まった。

他も利回りは4~5%あり、資産規模は拡大。14年以降も東急不動産キャピタル・マネジメント、ケネディクス不動産投資顧問、佐川急便系のSGアセットマックスの3社が、私募REITの運用開始を予定している。ケネディクスの田島正彦執行役員は、「資産規模300億円程度での14年3月からの運用開始を目指して、物件取得が順調に進んでいる」と語る。

三井住友トラスト基礎研究所の清原龍彦副主任研究員は、私募REIT市場が「16年下期ごろに1兆円、18年上期ごろに1.3兆円ぐらいに達するのではないか」と推計する。

順調な私募REITだが、リスクもある。最大のリスクは市場で売却できないことだ。別の投資家を見つけられればよいが、容易ではない。私募REIT本体に買い取ってもらうこともできるが、その受付期間や受付限度額には上限がある。「価格の下落局面を経験したことのないファンドなので、実際にダウントレンドに入ったとき、どれだけ優位性を保てるか未知数」(同研究所の前田清能主任研究員)だ。

(撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2014年1月11日号

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