「消費増税」と「新興国リスク」、97年と重なる不気味なシンクロ

橋龍増税政権を襲ったアジア通貨危機

鈴木 雅幸

アルゼンチン・ショックやトルコ・ショックの発生を機に、新興国リスクが高まっている。今のところショックは限定的であり、先進国を巻き込んだ経済危機に発展する可能性は低いとみられている。ただ、日本の場合、消費増税と新興国ショックのシンクロが1997年とよく似ている。日本経済にとっては、増税の試練に加えて米国のテーパリング(QE3=量的金融緩和第3弾の縮小)や新興国経済の変調という外からの不確定要素が不気味な重しとなりそうだ。

1997年の誤算

1997年4月、当時の橋本龍太郎政権は消費税率を3%から現行の5%に引き上げた。当時は日経平均株価が2万円を超え、前年の経済成長率は3.6%を達成していた。マスメディアは構造改革を支持し、世論も増税に大きな反論はなかった。しかし、その3カ月後に誤算が起きる。97年7月にタイ中央銀行が通貨アタックを受け変動相場制への移行を余儀なくされた。アジア通貨危機の始まりだ。日本の製造業にとって、成長センターといわれたアジア地域への輸出に悪影響が及んだのだ。

97年11月、山一証券は自主廃業を決定した(撮影:尾形文繁)

97年の誤算は輸出だけではなかった。国内では11月に金融連鎖破綻が起こる。まず11月3日に三洋証券が経営破綻、11月17日には北海道拓殖銀行が都市銀行として初めて破綻した。さらに11月24日には山一証券が自主廃業に追い込まれた。バブル崩壊後の不良債権問題がクローズアップされ、その後の日本長期信用銀行、日本債権銀行への公的資金投入、国有化へと続く。いわば、日本経済を根底から揺るがした「危機の序章」が、97年の消費増税とアジア通貨危機から始まったといえる。

いま、市場ではアジア通貨危機の再来はないとい見方が大勢だ。新興国ショックが広がったとしても、先進国の経済回復が新興国を好転させるとみている。現況の金融機関も当時のような危機が起こるなどとは当然考えていない。しかし、消費増税と新興国リスクのシンクロを決して侮らないほうがいいと、歴史は語っているのかもしれない。そのうえで、経常赤字を抱えるフラジャイル・ファイブ(ブラジル、トルコ、南アフリカ、インド、インドネシア)など新興国経済の構造的問題を点検しておこう。

マネーの逆流

現下の新興国で起きている変調は、米国のリーマンショック後の大規模な金融緩和の副作用といえる。イージーマネー(金利の安い投資資金)が新興国に流入し、実力以上の通貨高と高インフレを発生させた。ところが、米国FRBによる毎月100億ドルのテーパリングが昨年の12月から始まり、新興国から一気に投資資金が逆流している。資金が流出すれば通貨安となり、輸入物価を押し上げインフレを招く。輸入超過は経常赤字を悪化させ、経常赤字が慢性化すれば対外債務を支払うための外貨準備の減少が起こる。

ページトップ