サントリーHD、ビーム社巨額買収の勝算

蒸留酒市場で世界3位へ 

田嶌 ななみ
ビーム社買収で広がるサントリーHDのウイスキーラインナップ。「ジムビーム」「メーカーズマーク」などが有名。撮影:梅谷秀司

「1兆7000億円という額は、確かに高いっちゃ高い。だが、30年分のグローバルな成長、この時間を買うと考えれば、高い買い物ではない」──。

今年2月のサントリーホールディングス(HD)2013年度の決算会見。佐治信忠社長は、いつもながらの「佐治節」で、食品業界では前代未聞の規模の買収をこう評価した。

サントリーHDは今年1月、米大手蒸留酒メーカーのビーム社買収を発表。買収額は160億ドルに上る。これはサントリーHDの13年度売上高2兆円に迫る額だ。買収額が膨らんだ背景には、高株価に加え一筋縄ではなかった交渉プロセスもある。

佐治信忠社長

今後の成長戦略の柱として海外でウイスキー事業の展開を強化したいサントリーHDは、従来からビーム社買収に興味を示してきた。買収交渉が本格化したのは13年11月。ビーム社のマシュー・J・シャトックCEO(最高経営責任者)が来日し、佐治社長と会談。佐治社長は正式に買収の意思を伝え、翌日にはビーム社の取締役会に書簡を送った。

「両社の製品ポートフォリオや事業基盤を合わせれば、競合に対抗でき、将来的な業界の成長に一役買える」「ビーム社の既存事業の縮小や、大規模な雇用削減は行わない」──。書簡にはビーム社買収への熱意と配慮がつづられていた。

ビーム社の対応は冷静だった。書簡を受け取った後、1週間以内に、ある大手海外酒類メーカーに買収の意思があるか打診し、そのうえでサントリーHDの初期提案を拒否した。ただ、その酒類メーカーの回答は「買収は考えられなくもないが、全事業を買収する可能性は薄い」と鈍かった。このほかにも、ビーム社買収を視野に入れていた酒類メーカーはあったが、単独買収には資金面で踏み切れずにいた。

それでもビーム社が強気だったのは、何としてもビーム社を傘下に入れたいサントリーHDの思惑が見透かされていたからだ。ビーム社は増額をのまないかぎり交渉に応じない姿勢を貫き、他社が買収意思を示さない中でも、サントリーHDは二度の買収額増額を余儀なくされた。

2カ月の交渉の末、最終的に1株当たり83.5ドルの買収額で合意。初期提案より総額で1000億円弱高い金額となった。サントリーHD側は買収額が吊り上がっても躊躇する姿勢を見せることはなかった。だが、巨額の買収額は妥当なのか。

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