焦点:ECBが行動しなければユーロ高継続へ

ユーロ圏諸国での構造改革が国際資本を引き付ける磁石の役割に

4月17日、ユーロ相場を押し上げている要因の多くは消えそうもない。欧州中央銀行(ECB)が追加の金融緩和をちらつかせ続けているのは、そうした事情もある。写真はECB本部前で昨年1月撮影(2014年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

[ロンドン/フランクフルト 17日 ロイター] -ユーロ相場を押し上げている要因の多くは消えそうもない。欧州中央銀行(ECB)が追加の金融緩和をちらつかせ続けているのは、そうした事情もある。

ユーロは2011年に付けた高値にはなお及ばないが、ユーロ圏のインフレ率がゼロに近づいているため、ECBはユーロ高がデフレ圧力を強める可能性に神経を尖らせている。

ドラギECB総裁は週末、ユーロが上昇すれば追加緩和の可能性があると示唆した。追加緩和は何らかの形の量的緩和となる可能性がある。

実際、ユーロ高の一因は米国と日本が量的緩和を続ける一方、ECBのバランスシートが縮小していることにある。

ABNアムロの経済調査統括、ニック・コーニス氏は「ECBが本当にユーロを押し下げたいなら、日銀から学ぶことができる。大規模な量的緩和は自国通貨を大幅に押し下げる傾向がある」と話す。

ユーロは過去半年間でドルに対して2.3%、対円では約6%、それぞれ上昇した。通貨バスケットに対する実効レートは昨年5%上昇して最近2年半ぶりの高値を付けた。

ECBスタッフの示す2016年までの物価予想では、ユーロ/ドルの想定レートを1.36ドルに置いているのに対し、現在の相場は1.38ドル前後。次回のスタッフ予想は6月5日発表で、想定レートがユーロ高方向に修正されれば、追加緩和の材料がまた一つ加わる可能性がある。

<引き付けられる投資家>

ユーロ高の要因は多い。第一に、危機に見舞われたユーロ圏では痛みをともなう財政改革が実を結びつつあるため、国際的な投資家がユーロ圏の株式や債券市場に戻っている。

ギリシャは4年ぶりに国債発行を再開し、応募倍率は7倍に達した。

バンク・オブ・ニューヨーク・メロンによると、ポルトガル、スペイン、イタリアの債券市場でも力強い資金流入が見られる。UBSによると、ユーロ圏の株式市場には先週だけで15億ドル超が流入した。

2012年に国際支援を仰ぐ寸前に追い込まれたスペインでは、複数の不動産投資信託(REIT)が上場により資金を調達。著名投資家ジョージ・ソロス氏や米債券運用会社パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)などそうそうたる海外投資家が投資した。錚々たる

米資産運用会社ブラックロックは今やイタリアのモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナの株式5.8%を保有する最大株主で、ウニクレディトやインテサ・サンパオロなど他の伊銀行の株式も保有している。

これらの動きはいずれも、ある程度ユーロへの資金移動を伴う。

ブレマー・ランデスバンクのチーフエコノミスト、フォルカー・ヘルマイヤー氏は「(危機に見舞われたユーロ圏諸国での)構造改革が、国際資本を引き付ける磁石の役割を果たしており、これは当然のことながらユーロ相場にプラスの影響をもたらす」と語った。

UBSのデータによると、先週のユーロ/ドルの買い越し額は2月末以来で最高となった。資産運用会社とヘッジファンドから強い需要が寄せられたという。

<四方八方から圧力>

一方、ユーロ圏の銀行は2011年末と12年初めにECBが実施した長期資金供給オペの資金を返済しつつある。

この結果、金融システムから過剰流動性が引き揚げられて短期金利が上昇し、高い利回りを求める投資家にとってユーロの魅力が増している。米国のマネー・マーケット・ファンド(MMF)がそうした投資家の筆頭だ。

トレーダーによると、中国人民銀行、韓国銀行など一部の大きなアジア中銀が今年、自国通貨売りの市場介入で購入したドルをユーロに替えて外貨準備の分散化を図る動きもある。

世界最大規模の中国の外貨準備は昨年末の3兆8200億ドルから3月末時点で3兆9500億ドルまで増加しているため、こうした分散化が続く公算は大きい。

ECBが11月にユーロ圏の一元的な銀行監督機関になるのを前に、銀行ストレステスト(健全性審査)を実施するため、ユーロ圏の銀行がその基準を満たそうと海外から本国に資金を送還していることも、ユーロへの資金流入に手を貸している。

国際決済銀行(BIS)によると、欧州銀による新興国市場向けエクスポージャーは3兆ドルを超えており、昨年第4・四半期には規制基準達成のためにその規模を縮小して本国への資金送還が行われた。

こうした動きはユーロ圏の経常収支に反映されている。経常黒字は1月に253億ユーロと過去最高に達し、2月にはやや減少した。

アナリストは、ユーロが1ユーロ=1.40ドルに近づけばECBはユーロ高をけん制する発言を増やしそうだが、実際に行動を起こさない限り、大幅な下落は考えにくいと話している。

(Anirban Nag、Eva Taylor記者)
 

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