アングル:東電が入札火力の「将来買取」案を提示、自由化へ布石の思惑

安定供給のために買取オプションを追加

4月22日、東京電力改革の先行きに、発送電分離を目指す政府の自由化政策とぶつかりそうな「選択肢」が潜んでいるのではないか──。こうした見方が、電力業界の関係者から出ている。写真は東京電力のロゴ。2011年6月撮影(2014年 ロイター/Yuriko Nakao)

[東京 22日 ロイター] -東京電力<9501.T>改革の先行きに、発送電分離を目指す政府の自由化政策とぶつかりそうな「選択肢」が潜んでいるのではないか──。こうした見方が、電力業界の関係者から出ている。同社が21日に実施した火力電源の大規模入札説明会で、応札者が建設した発電所の買い取りを可能するオプションが提示されたためだ。

買い取りで圧倒的な供給力を回復し、自由化を乗り切る戦略の存在を感じ取る関係者も少なくない。

<安定供給のために買取オプション>

21日に東電本店で実施した火力入札の説明会には、電力、ガス、石油のエネルギー業界や、鉄鋼、電機、重電、商社など78社が参加。四国電力<9507.T>の全発電能力(696万キロワット)に迫る600万キロワットの火力電源を対象に2014年度中に入札を実施する。

供給開始は19年4月─24年3月の期間とし、契約供給期間は原則15年間。15年3月中に落札者を決めるとしている。

東電の担当者は説明会で、供給契約を解約することで双方が合意した場合は「東電が落札者から発電設備を買い取ることも可能」とするオプションが付くと明らかにした。東電は昨年度にも260万キロワットの火力電源入札を実施したが、その際はこうしたオプションはなかったという。

入札説明会の終了後、記者団の質問に応じた東電の担当者は、オプションを付けた理由について「やむを得ない事情で解約となった場合は、安定供給を続ける責務があり、作っていただいた設備は活用していく」と述べた。

東電が引き受けるオプションが付けば、入札に参加する事業者が金融機関から融資を受けやすくなるメリットもあると東電側は強調する。

<原発依存で遅れた火力改革>

原発に依存してきた結果、東電では火力発電設備の更新が進まず、運転開始から50年前後という老朽設備が少なくない。これらの設備は発電効率が悪く、燃料を余分に消費するため、燃料費が収支圧迫の要因の1つとして意識されている。

一方、全6基が廃炉となった福島第1原発と、再稼働が極めて困難な福島第2原発を抱える東電の原発の発電出力は今後、東日本大震災以前の半分以下になることが濃厚だ。

このため火力事業の改革は、東電再建の根幹と位置付けられている。1月に政府に認定を受けた新しい再建計画(新・総合特別事業計画)では、1000万キロワットの老朽火力を更新する計画を打ち出した。

今回募集した600万キロワットは、260万キロワットを募集しながら、68万キロワット分しか集まらなかった昨年度の入札の再募集と、新再建計画で打ち出した1000万キロワット分の一部を実施するという意味がある。

<経団連銘柄が東電を援護射撃の思惑>

エネルギー業界のある関係者は、今回の入札計画について「経営トップが経団連の要職に就くような優良な大企業に、東電が助けてもらう構図だ」と解説する。

電気の値段は、卸電力取引所だと1キロワット時当たり14─15円の値が付く。ところが、東電が昨年実施した260万キロワットの入札では上限価格を同9.53円と設定した。その非常に低い上限価格が、落札量低調(68万キロワット)の原因とみられている。

68万キロワット分の落札者は、中部電力<9502.T>・東電連合と、新日鉄住金<5401.T>電源開発(Jパワー)<9513.T>の2陣営だった。

エネルギー、重電、商社などの企業群にとって、東電は大口の購入先として、その意向を無視できない存在だ。東電との長期的な関係を重視して、自社の資金で建設した火力電源を将来、東電に売却する事例が出てくる可能性も否定できない。9円台での入札自体が、東電への協力だという指摘が複数の業界関係者から出ている。

<東電の火力改革、自由化と共存するか>

政府が打ち出した電力システム改革では改革の総仕上げとして、発電部門と送配電部門を別会社にする「発送電分離」を18─20年に実施するとしている。

東電が入札電源から受電を始めたり、場合によっては発電所を買い取る時期は、電力改革が本格化する時期と重なる。

発電所の買い取りオプションを入れた東電の思惑について、先のエネルギー業界関係者は「自由化の中で、自社に有利にしたいという狙いだろう」と指摘する。

2000年以降、大口需要家向けを対象に、電力小売りの部分自由化が段階的に進められたが、自由化対象市場で新電力が得たシェアは4%弱(12年度)にとどまる。

ある新電力幹部は「売りたくても売る電気を仕入れることができなかった」と、新規参入組が低シェアに甘んじた理由を語る。電力事業を成功させるには、まず十分な発電能力が必要となる。そこにこれまでの自由化の構造的な問題が潜んでいた。

入札にかけた電源設備を将来、買い取ることができるとする東電の火力改革は、政府が進めようとしている発送電分離という電力システム改革の方向性と真っ向からぶつかるようにもみえる。

ある経産省幹部は「東電の入札にかける電源を、全量東電に売るのではなく、一部は卸市場や新規参入者に売ることになれば、自由化と歩調を合わせることができる」と指摘している。

(浜田健太郎 編集:田巻一彦)

ReutersCopyright
copyright (C) 2017 Thomson Reuters 無断転載を禁じます

ページトップ