焦点:ECBがQE実施してもユーロ高反転には力不足

1兆ユーロ拡大しても日銀のように倍増とはならず

4月29日、欧州中央銀行(ECB)はユーロが上昇を続ければ量的緩和(QE)に踏み切る可能性を示したが、投資家やアナリストの間では、それでもユーロの大幅な下落は望み薄との見方が多い。2012年7月撮影(2014年 ロイター/Alex Domanski)

[ロンドン 29日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)はユーロが上昇を続ければ量的緩和(QE)に踏み切る可能性を示したが、投資家やアナリストの間では、それでもユーロの大幅な下落は望み薄との見方が多い。

QEは少なくともドイツにおいてタブー視されているが、実行すればユーロの上昇に歯止めを掛ける可能性がある。しかしECBのQEは控えめな規模にとどまると見られており、ユーロ相場が本格的に反落する公算は小さそうだ。

日銀と米連邦準備理事会(FRB)がバランスシートを拡大させているのに対し、主要3中銀の中でECBだけが縮小を許していることにも、QEに対するタブー感の強さは表れている。

ECBのバランスシートが縮小しているのは、ユーロ圏の銀行が債務危機の際にECBから低利で借り入れた資金を返済しているためで、これが短期金利を押し上げてユーロ高を招いている。

これに対してFRBは月額550億ドル相当の資産購入を続けており、日銀は1年前、2年間で1兆4000億ドルを市場に供給すると約束した。

ドラギECB総裁は今月、デフレの脅威に対抗し過度なユーロ高に歯止めをかける手段として、QEを選択肢に加えた。しかしその後の動向をみると、ECBが依然としていかにQEを警戒しているかが分かる。ある関係筋は28日、ドラギ総裁がドイツの議員に対し、QEの可能性はなお低いと告げたことを明らかにした。

ユーロは現在、貿易加重平均後の通貨バスケットに対して2年半ぶりの高値近辺にあり、対ドルでは1ユーロ=1.38ドル強と、年初から0.6%上昇している。

日本ではQEに対する期待が高まっていたところに、大規模緩和の発表という「衝撃と畏怖」が効果を発揮して円は急落した。

しかしスタンダード・ライフ・インベストメンツの投資ディレクター、ケネス・ディックソン氏は「日銀型の衝撃を期待するなら、がっかりするだろう」と言う。

ディックソン氏は「ECBは常々、ユーロ圏の状況は日本とは異なると言い続けている。従ってQEがユーロを押し下げるとしても、円のような10─15%の下落は望めないだろう」と話した。

ユーロ圏のインフレ率は0.5%と、ECBの中期目標である2%弱を大幅に下回り、ユーロ高が輸入物価を押し下げている。

<まだ日本ではない>

これまでのところECB当局者は、ユーロ圏は日本とは違うと強調している。しかし報道によると、ECBは1年にわたる1兆ユーロ(1兆3800億ドル)規模の資産購入の可能性を研究しているという。

これは日銀が計画する資産購入規模に匹敵するように見えるが、バランスシートに対する比率はわずかながら低い。ECBのバランスシートは約2兆2000億ユーロなので、1兆ユーロ拡大しても日銀のように倍増とはならない。

FRBに至っては、バランスシートが金融危機前の9000億ドルから4兆ドル超に拡大している。

モルガン・スタンレーのグローバルFXストラテジー統括、ハンス・レデカー氏は、ユーロを持続的に下落させるには1兆5000億─2兆ユーロ規模のQEが必要になると見る。

シティのエコノミスト、ギョーム・メヌエ氏は9月にQEが実施されると予想。ただ、1兆ユーロ規模ではユーロ圏の景気見通しを変化させるのに不十分ではないかと言う。

<高をくくる市場>

ユーロが下落する兆しはほとんど見えない。

来週のECB理事会後にユーロが1.37ドルまで下落することを見込む取引は一部で見られるが、その後QEが実施される可能性はほとんど相場に織り込まれていない。

RMGウエルス・マネジメントのパートナー、ハワード・ジョーンズ氏は「投資家はECBが言葉を実行に移すのを望んでいる。現時点では、ECB内でQEについて意見が一致していないのではないかとの疑念がある」と述べた。

ECBには、ユーロ圏内の多様な国々を導いて適切な形のQEを導入するという課題もある。ECBが資産担保証券(ABS)購入を行えるよう、ABS市場を発展させたいなら、素早く行動を起こす必要も出てくる。

これらすべてを考え合わせると、ECBがQEに踏み切ったとしてもユーロ高の流れを変えるには力不足かもしれない。RMGのジョーンズ氏は「ECBが日銀型の刺激策を実施するとは思えない。QEを行うとしても非常に段階的なものになるだろう」と話した。

(Anirban Nag記者)
 

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