上がらない米長期金利、日銀緩和期待後退でドル/円重く

低位で安定している米物価が金利低下を促す

 5月1日、米国では株価が過去最高値を更新する半面、長期金利が上がらない状況が続いている。写真は2008年3月撮影(2014年 ロイター/Mark Blinch)

[東京 1日 ロイター] - 米国では株価が過去最高値を更新する半面、長期金利が上がらない状況が続いている。米経済は堅調だが、新興国経済の減速により、物価が上がりにくいディスインフレ傾向が先進国間で広がっているためだ。

米低金利の継続予想が強まる一方、日銀の追加緩和期待は後退。ドル/円は上値が重くなり、日本株もレンジ内の動きから抜け出せなくなっている。

<上がらない米物価が金利低下促す>  

米ダウ<.DJI>は30日、45ドル高の1万6580ドルまで上昇し、終値としての過去最高値を更新した。一方、米10年債は2.65%、米30年債は3.46%にいずれも低下。セオリーとは反対の動きになっている。

今年第1・四半期の米GDP速報値が年率換算で前期比0.1%増と、2012年第4 ・四半期以来の低い伸びにとどまったことが金利低下の材料とされたが、寒波の影響が出るのは事前に予想されていたことであり、株式市場では悪材料視されない程度の下振れだった。材料の評価というよりも、金利低下のモメンタムが米債券市場には働いているとみるべきだろう。

実際、米長期・超長期金利はテーパリング(量的緩和縮小)が昨年末から始まったにもかかわらず年初から低下傾向にある。その間、米株は年初に調整局面があったが、その後切り返し、堅調な景気や企業業績を背景に過去最高値を更新してきた。米金利を押し下げているのは、米景気や企業業績とは別の要因である可能性が大きい。

その要因の1つとみられているのは、低位で安定している物価だ。米連邦準備理事会(FRB)の目標上限である2%に対し、3月のコアCPI(消費者物価指数)は前年比1.7%上昇となり、価格上昇圧力は依然抑制されている。物価が低位で推移していることで、利上げ観測が高まらず、投資家に債券投資の安心感を与えているという。   

「QE3(量的緩和第3弾)はバブルの発生原因になりかねないとしてテーパリングが進んでいるが、米国の物価は上昇していないため、低金利自体は続けても副作用は大きくないとFRBはみているようだ。利上げが遠いならば、過剰流動性相場をしばらく満喫できると債券投資家は踏んでいる」と三井住友アセットマネジメント・債券運用グループの深代潤シニアファンドマネージャーは指摘する。

前日のFOMC(米連邦公開市場委員会)でも100億ドルの資産買い入れ規模の縮小が決まったが、米短期金利先物のレートでみれば、2015年7月まで利上げはないとの市場の見方は変わらなかった。

<新興国経済の鈍化が背景>

こうしたディスインフレにともなう金利低下傾向は欧州でも同じだ。3月のユーロ圏CPIは前年比0.5%上昇と前月の0.7%上昇から鈍化。欧州中央銀行(ECB)が物価安定の上限めどとする2%弱を大きく下回っている。金利は、イタリア10年債利回り

先進国の物価が上がらない最大の理由と考えられているのが、新興国経済の鈍化だ。「中国をはじめとする新興国経済の需要が緩やかになってきたことで、国際商品価格などの値段が上がりにくくなっている」(シティグループ証券チーフエコノミストの村嶋帰一氏)という。米国経済自体は緩やかに拡大しているものの、グローバルなディスインフレ圧力が米国物価にのしかかっている。  

中国国家統計局が1日発表した4月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.4となり、3月の50.3から上昇したが、予想の50.5には届かなかった。政府の目標成長率である7.5%を維持するために、政策が打たれたとしても、「投資から改革」のなかでは、以前のような高い経済発展は期待できない。

欧米の景気は回復してきているが、あくまで緩やかな成長であり、以前のような伸びではない。新興国の成長率パワーを取り込んで先進国も成長するという経済モデルは、新興国の賃金が上昇してきたことで終わりを迎えた。OECD(経済協力開発機構)のデータによれば、米国の潜在成長率は1989年から98年の平均3.2%に対し、2013年は2.1%に低下している。こうした成長率鈍化も低金利環境の一因とみられている。

ディスインフレ傾向で、欧米金利は上がりにくくなっている一方、日本では強気な日銀の姿勢もあって、追加緩和期待が大きく後退している。これまでと逆方向のイメージであり、ドル/円やユーロ/円の上値を押さえる要因だ。国内企業の決算発表では輸出企業を中心に慎重な2015年3月期業績予想が目立つ。円安のサポートがなくなったことで、日本株も1万4000円─1万5000円のレンジを上抜けにくくなっている。

(伊賀大記 編集:吉瀬邦彦)
 

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