「刺激」求める市場、多少の指標改善では反応鈍く

すでに相場に織り込まれた米景気の改善

5月2日、米経済が改善していくという見方が相場にほぼ織り込まれてしまったため、米経済指標が多少良い程度ではマーケットは反応しにくくなっている。東京証券取引所で1月撮影(2014年 ロイター/Toru Hanai )

[東京 2日 ロイター] - 米経済指標が多少、良い程度ではマーケットは反応しにくくなっている。緩やかながらも米経済が改善していくという見方は相場にほぼ織り込まれてしまったからだ。

物価が安定するなか、米金利も上がらずドル/円や日本株もレンジ内取引が継続。ボラティリティは世界的に低下し、商いも薄い。市場に方向感をもたらす「刺激」が求められている。

 <織り込まれた米景気の改善>

世界のマーケットを動かす経済指標といえば、現在では米国と中国のデータだろう。日本や欧州などでは、そのときどきで材料視されるマクロ指標はあるものの、市場のトレンドを左右するには至らない。市場の反応を見る限り、世界経済の運命を握っているのはやはり米中両国だ。

しかし、米国に関していえば、経済指標に対する市場の反応は鈍くなっている。前日1日に発表された4月の米供給管理協会(ISM) 製造業景気指数は54.9と昨年12月以来の高水準となったが、米株の反応はまちまち。米雇用統計に並ぶ重要指標だが、米金利はむしろ低下し、ドル/円も上値が重かった。

4月26日終了週の米新規失業保険申請件数がやや悪化するなど、悪材料もミックスされていたが、3月の米個人消費支出が2009年8月以来の大きな伸びになるなど、総じてみれば、米経済の緩やかな回復を裏付ける内容だったと受け止められている。「米国の1─3月期GDPは寒波の影響などで下振れたが、4─6月にかけて景気拡大ペースが持ち直すとの見方と整合的」(外資系証券エコノミスト)という。

マーケットの反応の鈍さは、米経済の緩やかな回復というシナリオはすでに相場に織り込まれてしまったことが背景だ。年初は、異例な寒波による影響があったが、春以降は総じて堅調な経済指標が多い。「緩やかに米経済が回復するというシナリオはすでに相場に織り込まれてしまった。多少、市場予想値を上回る程度では反応しなくなっている」(T&Dアセットマネジメントのチーフエコノミスト、神谷尚志氏)という。

ウクライナ情勢など懸念要因は残っているものの、世界的にボラティリティは低下。シカゴ・オプション取引所がS&P500指数のオプション価格の情報を用いて算出・公表するVIX(別名:恐怖指数)<.VIX> は1日の海外市場で13.25と4日連続で下落している。米ダウ<.DJI>は終値では過去最高値を更新しているが、水準的には年初と変わらない。相場全体にこう着感が強まる中、市場は「刺激」を求めている。

<強すぎる米雇用統計に警戒>

市場が求める「刺激」となるか注目されているのは、2日発表の4月米雇用統計だ。エコノミスト予想の平均は、非農業部門雇用者数が前月比21万人増、失業率は6.6%と水準的にはかなりの米労働市場の改善が見込まれている。

ただ、市場予想値とほぼ変わらなければ、マーケットは大きく動かないとの見方は多い。多少、雇用統計が上振れたとしても物価が上がらないなかでは、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策スタンスは変わらないとの市場の認識があるためだ。

FRBが重要視する個人消費支出(PCE)のコア価格指数は3月も前月比0.2%、前年比1.2%と引き続き低水準。FRBの上限めど2%には遠い。米雇用統計が改善しても、緩やかな景気回復を示す範囲内であれば、早期の米利上げ観測は強まらず、金利は急上昇せず、株価も堅調との見方が多い。

一方、緩やかな米景気回復が織り込まれたなかでは、4月米雇用統計が市場予想に反して悪い場合の方が市場反応は大きくなる可能性がある。株安・円高のリスクオフ方向への動きを警戒する声も出ている。

「米雇用統計が悪ければ素直にドル安/円高になるだろう。非農業部門雇用者数の増加幅が20万人を超えてそこそこ良い数字であれば安心感が出るが、20万人を割ってくればドル安/円高がいったんは進みそうだ。その場合、今まで堅かった101円前半で支えられるかが焦点になる」とシティバンク銀行・個人金融部門シニアFXマーケットアナリストの尾河真樹氏は指摘する。

指標が悪化する以上に警戒されているのは、米雇用統計が強すぎる場合だ。米経済の過熱感を示す内容となり、テーパリング(米量的緩和)の加速、もしくは早期の米利上げを警戒する形で米株が下落する可能性がある。米金利の上昇は、ドル高・円安材料になるが、リスクオフの円買いでドル/円が伸び悩めば、日本株への影響はマイナスの方が大きくなる。

IG証券マーケットアナリストの石川順一氏は「米株の反応がカギを握っている。米金利が上昇しても、米株が急落すればリスクオフの円買いがクロス円で強まるだろう。ドルもリスクオフで買われるため、ドル/円でみれば、大きく動かないとみられるが、少なくとも米金利の上昇には素直に反応しにくくなる。米株安、ドル/円小動きの組み合わせなら日本株にはネガティブ」との見方を示している。

(伊賀大記 編集:内田慎一)
 

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