市場で修正される過度な悲観、アベノミクスはサプライズ余地生じる

5月8日、マーケットでは過度な悲観の修正が入っている。写真は昨年10月、都内で撮影(2014年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 8日 ロイター] - マーケットでは過度な悲観の修正が入っている。ウクライナ情勢の緊張感がやや和らいだほか、4月の中国輸出入も予想外に改善した。米住宅市場には底入れの兆しもある。アベノミクスへの期待感は低下したものの、逆にポジティブ・サプライズの余地は大きくなってきた。楽観には至らないまでも、買い戻しが入り、日本株やドル/円は反発している。

 <ウクライナと中国の懸念和らぐ>

まずウクライナで緊張感が和らいだ。ロシアのプーチン大統領が、ロシア軍がウクライナ国境から引き揚げたと主張。米ホワイトハウスは引き揚げた形跡はないとみているが、プーチン氏がロシアと欧米の対立を和らげたいと考えているサインであるとの見方が出ている。

先行きはまだ不透明だが、ウクライナ情勢の緊迫化はリスク回避ムードの大きな背景だっただけに、「雪解け」への期待が広がったことで、市場にポジティブ材料を受け入れやすい素地を作ったと言える。

そこに中国経済についてのポジティブ材料が出た。4月の中国貿易統計によると、輸出は前年同月比0.9%増、輸入は同%0.8増となった。増加幅はわずかだったが、市場予想は輸出が前年比1.7%減、輸入は同2.3%減とマイナスだっただけにサプライズとなった。

「投資から改革」を中国政府が進めるなか、以前のように高い成長率は期待できないとしても、目標成長率の7.5%を下回るような事態となれば、昨年のように政策を発動し、経済を下支えることが期待されている。不動産市場などを抱える中で改革をうまく進めることができるかはまだ不明だが、経済下振れを自力で修正できる「力」はあるだけに、過度な悲観は必要ないとみる中国ウォッチャーも多い。

日経平均<.N225>は序盤、上値が重かったが、中国輸出入の改善を好感し、上げ幅を拡大。一時200円を超える上昇となり、1万4200円台を回復した。「フローはまだ小さいが、海外勢、国内勢ともに買いを入れている。前日みられた欧州系証券のTOPIX先物売りは海外長期資金の日本株外しではなく、仕掛け的な売りだったとの見方が多い」(大手証券トレーダー)という。

<米住宅市場にも底入れの兆し>

米住宅市場についても今後、過度な悲観が修正される可能性がある。

イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は7日、議会の経済合同委員会で証言し、米住宅市場について「このところの住宅市場の活動の停滞は、現在予想されているよりも長引く可能性がある」と慎重な見方を示した。

確かに直近のデータでは、3月の新築1戸建て住宅販売は8カ月ぶりの低水準、3月の中古住宅販売戸数が2012年7月以来の低水準と、米住宅販売は依然さえない。しかし、昨年夏以降の金利上昇や寒波の影響はそろそろ一巡するとみられており、住宅販売保留指数や住宅ローン申請指数などの先行指標では、安定化に向けた兆しも出始めている。

また米中古住宅の在庫比率は3月時点で5.2カ月分。6カ月分を下回っていることは、市場の需給バランスが健全であることを示す。在庫ひっ迫が続いていることで価格は上昇。上昇ペースは鈍化しているものの、価格中央値は前年比7.9%上昇し、6カ月ぶりの高水準となった。

SMBC日興証券チーフエコノミストの牧野潤一氏は、1)米住宅投資のリターンが9.2%と高い、2)平均の住宅価格は1900万円程度と平均の家計所得の1000万円に比べ高くない、3)年間の世帯数が100万戸増えているが、新築の供給は40万戸程度であるほか、中古の在庫は200万戸と少ない──ことを指摘。徐々に米住宅販売は持ち直すとみている。

  <日本株には割安感>

「アキレス腱」だった住宅市場が持ち直して来れば、米経済の成長スピードが加速するとの期待が高まる。物価が上がらないこともあり、米金利は低位で推移しているが、米経済が加速すれば、マーケットはテーパリング(量的緩和縮小)の終了、そして利上げを視界に入れざるを得なくなり、米金利にも上昇圧力がかかる見通しだ。

  米金利の低下と日銀の追加緩和期待の後退でドル/円は上値が重い状態が続いていたが、米経済加速が確認されれば、再び上昇トレンドに戻る可能性もある。円安が再び進行すれば、日本株にも買い戻しが入りやすい。

アベノミクスに対する市場の期待値は低くなってきたが、それだけポジティブ・サプライズも出やすくなっていると解釈することもできる。日経平均の予想株価収益率(PER)は13倍台と歴史的にみて割安感の漂う水準まで下がっており、バリュエーション面で日本株の反発余地は大きくなっている。

大和証券・投資戦略部シニアストラテジストの塩村賢史氏は「法人税減税の具体的なスケジュールを示すなどしっかりした成長戦略を打ち出せば、アベノミクスに対する期待が低下しているだけに、好感される余地は大きくなっている。日銀の追加緩和も期待がかなり後退しているだけに、サプライズは起きやすい」と指摘。決算発表が一巡して国内企業業績への警戒感が解消されれば、日本株もリバウンドに向かうとの見方を示している。

(伊賀大記 編集:山川薫)

 

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