バイオ・創薬ベンチャー株買いはリスクが大きすぎる?

小さな研究所レベルで赤字の会社が大半だが…

一般に、「ベンチャー企業」とは、「先端技術などを研究、開発して世に送り出す中小企業群」と定義されている。バイオ・創薬ベンチャー企業にとっての技術は、バイオや医薬品開発にかかわるノウハウである。医療分野に新たな治療法などを提案するのがバイオ・創薬ベンチャー企業群といえよう。バイオ・創薬のベンチャーの領域は、他のベンチャーの分野よりも幅が広い。これは、医療そのものの裾野の広さと無関係ではない。

海外に目を転じると、日本と欧米の市場ではバイオ・創薬ベンチャー企業の置かれた状況が大きく異なっているのがわかる。米国のナスダック上場のバイオ・創薬ベンチャーであるギリアド・サイエンシズ(ティッカーシンボル:GILD)は、エイズ治療薬やインフルエンザの治療薬で世界市場をリードしている。

国内最大手の医薬品メーカーでも世界上位10社には名を連ねていない(写真は武田薬品工業の長谷川閑史社長、撮影:梅谷秀司)

同社の直近の売り上げは100億ドルを突破。円換算すれば1兆円規模だ。純利益は3000億円程度と国内製薬では同利益の最も大きい大塚ホールディングスの約2倍の規模である。時価総額は10兆円程度であり、日本の大手新薬メーカー5社(武田薬品工業、アステラス製薬、第一三共、大塚ホールディングス、エーザイ)合計を上回るレベルにある。

ギリアド・サイエンシズには「ベンチャー企業の域を脱した」との評価もある。しかし、2~3年前までは間違いなく「バイオ・創薬ベンチャー企業の雄」との位置づけだった。日本のバイオ・創薬ベンチャーには今のところ、これに伍していけそうな企業はない。

バイオ・創薬ベンチャー企業で第2位のバイオジェン・アイデック(米ナスダック上場、ティッカーシンボル:BIIB)でも時価総額は7兆円を超える。これは、国内大手製薬企業上位3社合計に匹敵する規模だ。

国内製薬首位の武田薬品工業でも売り上げでは世界10傑に届かず、日本の医薬品産業が欧米企業と距離があるのは否定できない。日本のバイオ・創薬ベンチャーは医薬品メーカーよりもさらに大きく出遅れている。しかも、これらの企業群の過半は赤字である。小さな研究所のレベルで、開発品目も3~5品目程度にとどまる。開発のレベルも臨床中期(フェーズⅡ)以下が大半だ。

このため、国内のバイオベンチャー企業の株式購入は、“一本釣り”だと大きなリスクを伴う。開発品の頓挫は即、デフォルトにつながる可能性すらある。バイオ・創薬ベンチャーへ投資する場合には、一般的な投資よりも分散を図るようお勧めしたい。仮に、3社に投資して1社が破綻しても1社が成功すれば、元は取れるケースが多い。国内のバイオ・創薬ベンチャー企業が駆け出しである分だけ、成功の“見返り”も大きいからだ。

最近、小野薬品工業(4528)の「PD-1抗体」が注目されている。がん治療に幅広く利用できる薬剤で、同社の株価は一時期、同薬への評価から大幅に上昇した。海外の大手投資家などからすれば、小野薬品の規模は中堅のベンチャー企業並み。時価総額は1兆円以下であり、ギリアド・サイエンシズやバイオジェン・アイデックなどに比べれば、“手頃”な規模だ。

バイオ技術ではないが、海外で大型化している田辺三菱製薬(4508)の多発性硬化症治療薬「ジレニア」は年間300億円程度のロイヤルティを稼ぐ。同薬の開発番号は「FTY720」でTは台糖、Yは吉富製薬であり、開発当時はまだ、ベンチャー企業レベルだった両社が手掛けた。台糖は三井製糖、吉富製薬は田辺三菱製薬にそれぞれ変わったが、現在の田辺三菱製薬の躍進は同薬に負うところも大きい。

スイスのロシュ社がベンチャーの買収で巨大化したことは有名な話だ。日本でも同様のケースは散見される。日本のバイオ・創薬ベンチャーの力は未成熟だが、中堅の製薬会社まで含めると、日本のベンチャー企業群のラインナップは意外と充実しているかもしれない。一方、海外のベンチャー企業への投資は妙味があるものの、情報を取得しにくいといったデメリットも無視できない。バイオ・創薬への投資は広い視野で考えることが肝要とはいえまいか。
 

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田辺三菱薬 (4508) 小野薬 (4528)

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