イベント接近で色めく市場、予想変動率がじわり上昇

材料出尽くしとサプライズの分かれ目はどこか

6月5日、ECB理事会と米雇用統計の重量級イベントを前に、大規模な市場変動に先駆けて変化することがある複数のボラティリティが動き出した。フランクフルトのECB本部で昨年11月撮影(2014年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

[東京 5日 ロイター] - 大規模な市場変動に先駆けて変化することがある複数のボラティリティが、ピクリと動き出した。今夜の欧州中央銀行(ECB)理事会と6日の5月米雇用統計の重量級イベントをきっかけに、大きな価格変動が起こり得るとの見方が一部で広がっているためだ。

リスクも大きくなってくるが、これまでのレンジ取引を脱しそうな雰囲気に「面白くなってきた」(国内証券)との声も出ている。

<動意付く相場>

1カ月物のドル/円ボラティリティ(予想変動率)は5月9日に5.6%(ミッド・プライス)まで低下し、過去最低水準を更新していた。だが、5日は6%と約1カ月ぶりの高水準となっている。

シカゴ・オプション取引所がS&P500指数のオプション価格の情報を用いて算出する別名「恐怖指数」と呼ばれるVIX<.VIX>も、4日の海外市場で12.08ポイントまで上昇。レベル的には年初来の最低付近にあるが、6月に入りわずかながら切り返してきた。

一方、日経ボラティリティ指数<.JNIV>などは依然として低下トレンドにある。ただ、日経平均のインプライド・ボラティリティ(IV)でみると、残存期間30日のコールIVが60日と90日のIVを上回っており、近く相場が上方向に振れることを織り込む動きもみせている。

一部のボラティリティ指数が高まってきたのは、足元でじわりとリスクオンムードが広がっていることもあるが、ECB理事会と5月米雇用統計という重量級のイベントが接近し「これをきっかけに相場が大きく動くのではないか」(国内投信)との思惑が広がってきたためだ。

ECB理事会で追加金融緩和が決定されることは、すでに市場に織り込まれてしまっている。しかし、その中身について見方は定まっておらず、材料出尽くしとなるのか、それとも「ドラギマジック」が再び披露され、サプライズとなるのか、市場は固唾を飲んで待ち構えている。

<豊富な「燃料」>

では、材料出尽くしとサプライズの分かれ目はどこか。

ロイター調査によると、ECBは主要政策金利のリファイナンシグ金利と中銀預金金利を引き下げ、預金金利についてはマイナス金利にするとともに、企業向け貸し出しに的を絞った長期資金供給オペ(LTRO)を導入するとの見方が大勢となっている。ただ、マイナス金利に関しては副作用も大きいことから異論も少なくない。

サプライズを起こすとみられているのは、大規模な資産購入、いわゆるECB版の「黒田バズーカ砲」だ。

ただ、国債購入は法的に難しく、資産担保証券(ABS)のマーケットは小さい。しかし、「だからこそ大きなサプライズが期待できる。ABS購入には反対論もあるが、購入規模が小さければ悪影響も限定的になり、かつ積極的な緩和姿勢もアピールできる」とSMBC日興証券・シニアマーケットエコノミストの嶋津洋樹氏は指摘する。

サプライズ感を演出できれば、ユーロ安/ドル高が進むとみられる。対ユーロでの円高圧力も強まるが、欧州金利が一段と低下し、つれて米金利も下がれば、米金利主導となっているドル/円も円安方向に振れる可能性が大きい。

日経平均<.N225>は1万5000円の大台を上回ってきたが、円安が進み、リスクオンムードが広がれば、もう一段高を目指す「燃料」に火が付くとの指摘もある。

東証が公表している日々の空売り比率は、ピークの36.1%(3月17日)からは低下しているものの、30%前後をキープ。依然として下落方向に賭けている投資家が多いことを示している。「歴史的な中立水準は20%程度。まだ売り方は多いようだ。もし相場がリスクオンに傾けば、踏み上げを誘って、もう一段高になる可能性がある」(立花証券・顧問の平野憲一氏)という。

<活気戻るか>

ただ、同時にユーロ安/円高も進むとみられ、ドル/円はさほど動かない可能性もある。ECBを通過しても、翌6日には5月米雇用統計の発表が待ち構えているためだ。

エコノミスト予想は、非農業部門雇用者の前月比増加幅が21万8000人、失業率は6.4%。

結果が市場予想を上振れるようであれば、米金利が上昇し、ドル高・円安の展開が予想される。米株が景気改善と金利上昇のどちらに反応するかは微妙だが、強気が支配する今の市場では「景気回復による金利上昇であれば、ネガティブな影響は限定的」(国内証券)との声が多い。

ただ、現時点では米景気改善を織り込んでいるだけに、ネガティブ方向の結果であった場合は、米株に利益確定売りを巻き込んで失望売りが出る可能性がある。米金利は少し上がってきたが、それでも2.6%程度であり、金利低下余地はそれほどあるわけではない。トータルでリスクオフ方向の反応になり、円高が進む可能性があるとみられている。

いずれにせよ、ここ2カ月ほどこう着感が強かった市場が動意づく可能性が大きくなっている。マネースクウェア・ジャパン市場調査室の山岸永幸氏は「レンジ取引がしばらく続き、マーケットにも活況さがなくなっていた。2大イベントを控え、波乱含みだが、相場としては面白くなってきた」と声を弾ませている。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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