焦点:国債買入減額で超長期債に需給不安、日銀版テーパリングの思惑も

「日銀と市場との対話がもっと頻繁にあってもいい」との声も

6月20日、盤石だった超長期ゾーンに需給不安が台頭してきた。日銀が残存期間10年超の長期国債買い入れを短期間に連続して減額したためだ。2011年8月撮影(2014年 ロイター/Yuriko Nakao)

[東京 20日 ロイター] - 盤石だった超長期ゾーンに需給不安が台頭してきた。日銀が残存期間10年超の長期国債買い入れを短期間に連続して減額したためだ。保有国債の平均残存期間を調整するテクニカル的な措置とみられているが、市場では日銀による超長期国債版の資産購入プログラムの縮小(テーパリング)ではないかとの見方も浮上している。

市場の日銀依存が強まり過ぎることへの警鐘とも受け止められ、金利上昇の懸念も出てきた。

 <相次ぐ減額で市場に不安>

超長期国債版のテーパリングと受け止められても仕方がないだろう──。メリルリンチ日本証券・チーフ債券ストラテジストの藤田昇悟氏は、日銀が18日に発表した新たな長期国債買い入れの運営方針について、そう話す。日銀は5月29日、1年前に発表していた運営方針に修正を加えていたが、3週間も経たないうちに再修正に踏み切った。藤田氏は「政策変更など特別な意図があるのではないか」との疑念も芽生えたという。

新運営方針によると、残存10年超の1回当たりの買入下限を1500億円から1300億円程度に引き下げた。日銀が6月上旬に買い入れた国債の平均残存期間は7.6年程度で規定の7年程度を上回っているため、平均残存期間の抑制が理由とみられている。

市場にとって衝撃だったのは、日銀が残存10年超の買い入れで年限細分化を打ち出したことだ。6月23日以降に行う最初の買い入れは、残存10年超25年以下を1000億円、残存25年超を300億円とする予定だ。「平均残存期間を抑制するため、残存25年超の買い入れを減らすことが狙いではないか」(外資系証券)という。

年限細分化が実施された場合、残存25年超の月間日銀買入額は1回300億円・5回で総額1500億円が予想される。

これに対し、日銀が6月上旬に買い入れを行った国債は、新発40年(第7回)債だけで1759億円に上る。そのため年限細分化によって市場参加者が30年債や40年債をこれまでのペースで日銀に売却することは難しくなる可能性がある。

市場では「入札では日銀への売却を前提にした応札が見込めない分、今後は利回りにリスクプレミアムが要求される可能性が高い」(国内金融機関)と、金利上昇を警戒する声が出ている。流動性供給、30年債、20年債、40年債と毎週のように続く8月の超長期債の入札は「JGBにとって7─9月の重大イベント」(国内証券)となってきた。

実際、日銀が10年超の買入額について1700億円に再減額する措置を取った3月13日の取引では、買入減額の通告をきっかけに国債先物が一時前日比1円安まで急落した。6月19日の市場でも、業者が超長期国債の在庫処分を急いだ結果、30年債や40年債の利回りが急上昇した。

 <日銀版テーパリングの思惑も>

買入減額のたびに繰り返される市場の混乱。「日銀と市場との対話がもっと頻繁にあってもいい」(複数の市場関係者)との声も少なくない。

日銀のこうした姿勢に、メリルリンチの藤田氏は「日銀が超長期ゾーンの金利コントロールを放棄する意思表示ではないか」との見方を示す。日銀はこれまで大規模な国債買い入れについて、リスクプレミアムを圧縮して金利低下を促す効果があると説明している。

日銀は18日の新運営方針発表の直前に、拡充された貸出増加支援資金供給の結果を発表。資金供給額は4兆9368億円と5兆円に迫った。

今後、四半期ごと通告される同供給額が順調に増えれば、日銀が金融調節の操作目標とするマネタリーベースの拡大に寄与する。そのため藤田氏は、国庫短期証券だけではなく、長期国債の買入額にも調整が入る可能性も否定できないと話す。

公的年金改革で保有国債が売却されたとしても、日銀オペが吸収してくれる──。そうした市場の「安心感」が10年国債金利を0.6%付近に押しとどめている背景だが、JPモルガン証券・チーフ債券ストラテジストの山脇貴史氏は「市場参加者のみならず、政府・財務省・GPIFなどの公的機関ですら、日銀に依存する状況に対して、日銀が危機感を強めていると推測される」という。

日銀が物価目標2%達成への自信を示す中、「次の一手は追加緩和ではなく、ひょっとしたらテーパリングではないか」(外資系証券の幹部)との思惑も、市場ではくすぶり始めている。

(星裕康 編集:田巻一彦)

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