高い地政学リスク下での原油下落、背景に景気への慎重ムード

マーケットに景気や企業業績への慎重ムードが広がりWTIは8日続落

7月9日、地政学リスクが依然として強く意識される中で、原油価格が下落している。写真は都内の株価ボード。2010年5月撮影(2014年 ロイター/Yuriko Nakao)

[東京 9日 ロイター] - 地政学リスクが依然として強く意識される中で、原油価格が下落している。イラク国内の原油設備に対する攻撃の可能性が低いとの見方が広がったこともあるが、ここにきてマーケットに景気や企業業績への慎重ムードが広がっていることが影響している。また、米ダウ<.DJI>が1万7000ドルの大台にいったん乗せ、達成感が出ていることも、投資家心理を慎重にさせているという。

<8日続落のWTI>

米国産標準油種WTIの中心限月8月物<CLQ4>は、8日の市場で8営業日続落となった。6月25日には1バレル107.50ドルを付けたが、足元では103ドル半ばまで下落している。イラクでの緊張感は解けず、イスラエルがガザ地区で軍事作戦を開始するなど地政学リスクは低下するどころか、むしろ高まっている。

それにもかかわらず、原油価格が下落している背景には米国を中心とした景気減速懸念がある。

6月米雇用統計は市場予想を上回る好調さをみせたが、1─3月の米国内総生産(GDP)確報値が2.9%減と大きなマイナスになったことが尾を引いているという。「4─6月期以降、回復したとしても、1─3月期の落ち込みが大きかっただけに2014年トータルでの成長率は当初思っていたほどは伸びない」(大手証券ストラテジスト)との見方が広がっている。

ばんせい投信投資顧問・商品運用部ファンドマネージャーの山岡浩孝氏は、原油価格の下落について「イラクでは『飯のタネ』となる原油設備の破壊はないとの見方が広がっているが、地政学リスクは高いままだ。そのなかでの価格下落は、原油の需給がタイトではないこともあるが、米国などの経済成長に警戒感が強まっていることが要因だ」と指摘する。

8日の米株市場では、企業決算シーズンを控え警戒感が広がる中、幅広い銘柄に売りが出て、米ダウ<.DJI>は100ドル以上の下落となった。一方、マネーの逃避先となりやすい金市場でも、足元は続落歩調だ。米金利も低下気味で「マーケット全体的に慎重なムードが漂っている」(国内投信)という。

<達成感が背景>

ただ、こうした慎重ムードの裏側には、米ダウが1万7000ドルの大台を突破するなど、マーケットにいったん達成感が広がったこともあるようだ。

「最近のマーケットは重箱の隅をつつくようにネガティブ材料を探してくる。6月米雇用統計も賃金は伸びなかったが、雇用は着実に増えている。慎重ムードが広がっているのは米株が大台を突破するなど達成感が出ているためだろう」と、三井住友アセットマネジメントのシニアストラテジスト、濱崎優氏は話す。

8日の米株市場では、企業業績への懸念が株価の下げ要因となったが、米企業決算発表の皮切りとなった米アルミ大手アルコア<AA.N>が8日発表した第2・四半期決算は、純利益が赤字から黒字に転じるなど好結果となった。

市場では「米アルコアの良好な決算を受けて、今晩の米国株が反発する可能性もあり、日本株も極端には売り込みにくい」(国内証券)との声も出ている。

トムソン・ロイターの調査によると、米S&P総合500種指数採用企業の第2・四半期決算は、前年同期比6.2%の増益になる見通し。4四半期(14年第3・四半期ー15年第2・四半期)の予想株価収益率(PER)は15.6倍だ。

企業業績の裏付けがあるだけに、米株が大崩れするとの警戒感は大きくない。ただ、バリューエーション的には割高感も漂う水準であり、量的緩和の効果も薄らいでくる中で、米株がもう一段の上値を追うためには、企業業績の拡大が欠かせないとみられている。

一方、日本株市場では、日経平均のPERは14倍後半と米株に比べて割高感はないが、TOPIX<.TOPX>は15倍台後半で相対的にみて割安とはいえない状況だ。地政学リスクが高いままでは円安も進みにくい。

アストマックス投信投資顧問・証券運用部シニアファンドマネージャーの山田拓也氏は「マクロ材料が乏しいなかで指数の上昇は期待しにくいが、業績が好調な個別銘柄への買いは続きそうだ。どの業種というよりも、業界の中で価格決定力があるような企業が選別され、は行色が強くなる」との見方を示している。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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