石黒英之さんに聞いた「日経平均は9~10月に1万7000円も」

ミネベア、セイコーエプソン、日本ガイシなどの「稼ぐ力」を高く評価

今年は1万7000円も射程だが、来年は米国の金融政策の出口戦略をめぐる議論が本格化で、株式相場は厳しい年に?(撮影:尾形文繁)

11日の東京株式市場では日経平均株価が5日続落。2012年11月5日から13日まで7営業日連続で下げて以来、1年8カ月ぶりの5日連続安となった。上値の重い状態はいつまで続くのか。テレビ番組などの市況解説でもおなじみの岡三証券・日本株式戦略グループ長、石黒英之さんに年内の相場見通しなどを聞いた。

ーー日経平均は1万5500円前後が壁になっています。

マクロ指標などで景気の立ち直りは確認できた。今は次の材料を探している段階。上場企業の決算待ちの状態だ。

「官製相場」の様相を呈していることが敬遠されている面もある。目先は買い材料が見当たらない一方で、下落すれば買い物が入ってくる。その結果、マーケットの変動率(ボラティリティ)が低下し、短期資金は主力株を避けるようになった。薄商いが続いているのもそのためだ。

それでも、バリュエーションの面からは依然として割安といえる。日本株の予想株価収益率(PER)から世界の株式市場の予想平均PERを差し引くとマイナス。これは民主党政権末期の12年10月から11月以来のことだ。日本株はディスカウントされており、外国人投資家の買う余地が残されている。

ーー海外勢は昨年15兆円近く日本株を買い越しましたが、今年は7月第1週(6月30日~7月4日)までに差し引き5000億円余りの売り越しです。

日本政府による「眠っているおカネを有効活用しよう」という政策面での後押しを外国人は評価している。眠っているおカネとは①年金積立金運用独立行政法人(GPIF)などの公的な運用資金約210兆円、②企業の手元流動性90兆円、③家計の現預金860兆円、の三つだ。

GPIF改革では国債偏重型のポートフォリオの見直しに乗り出した。企業の手元流動性に関しては、機関投資家の株主行動のガイドラインである日本版の「スチュワードシップコード」導入などを通じて、企業に「リターン革命」を起こさせるようプレッシャーをかけている。家計の現預金についても、少額投資非課税制度(NISA)の年100万円の非課税枠を年200万円へ拡大するのに前向きだ。

昨年の巨額の外国人買いにはこうしたおカネが動き始めることを予見して先回りした面がある。資金の動きが見えてくれば再び、買い出動するだろう。実際、6月第1週(2日~6日)以降でみれば、8000億円余りの買い越しを記録している。

ーー3月期決算会社の第1四半期(4~6月)決算発表は今月下旬から本格化します。

結構強い数字が出てくるだろう。4月の消費増税の悪影響が企業の想定に比べて軽微とみられるからだ。それはすでに経済指標からも明らか。増税後の落ち込みが小幅にとどまっていれば、市場でも評価されそうだ。

注目点は決算説明会での各企業トップのコメント。「会社計画を上回っている」といったポジティブな発言が出てくる確率は高そうだ。「第1四半期は増益」との観測記事も目立つ。

ーーただ、今2015年3月期通期では今のところ、小幅の経常増益にとどまる見通しです。

第1四半期の決算で企業の実力差が明らかになるだろう。同一のセクターでも選別の色合いが濃くなり、株価は“二極化”の進む公算が大きい。銘柄によってパフォーマンスに大きな差がつく展開になりそうだ。

強いのは稼ぐ力を持っている会社。ドル・円相場は膠着状態に陥っており、こうした局面で業績が伸びない企業は円安メリットが剥落すると、稼ぐ力がなってしまう証しだ。

これに対して、第1四半期でも2ケタ増益を確保できるような会社は、円安効果の消滅や消費増税前の駆け込みの反動減といったマイナス要因を吸収して利益の大幅増に成功したことを意味する。日本ガイシ (5333)ミネベア (6479)セイコーエプソン (6724)などは為替変動に関係なく、稼ぐ力を持つ会社と評価している。特にミネベアが手掛けるスマートフォン向けの液晶用バックライトは、同社以外に超薄型の製品を製造できる会社がなく競争力が極めて強い。

ーー今後の株式相場の見通しは。

当面は弱含みで推移するだろう。7~9月のいずれかの時点で、日経平均は1万4500円程度まで下落すると見ている。いわゆる「リスクオン」の修正が生じ、世界株全体で5%前後の調整がありそうだ。日本株もそれと無縁ではいられない。きっかけになるのは、何らかの「地政学リスク」の台頭だ。

いしぐろ・ひでゆき●岡三証券投資戦略部日本株式戦略グループ長、シニアストラテジスト(撮影:梅谷秀司)

ただ、その後は政策面での支援に加えて、足元の堅調な業績もにらみながら上値を切り上げるシナリオを想定。買いの主体は外国人や国内の年金だ。日経平均は9~10月に今年の高値水準に到達するだろう。1万7000円をつけるかどうか、というところまで値上がりしそうだ。少なくとも、昨年大納会の取引時間中につけた1万6320円のクリアは確実とみている。

もっとも、その後は年末にかけて再び弱含む展開を予想している。このタイミングで政府は消費増税を来年も実施するか否かの判断を迫られるため、これを受けてマーケットでも買い手控えムードが支配的にならざるをえない。

来年は一段の値下がりを覚悟する必要がある。米国の金融政策の出口戦略をめぐる議論が本格化する見通し。来年は利上げがコンセンサスになっており、株価は調整が避けられそうにない。

ーー日経平均を東証株価指数(TOPIX)で割った「NT倍率」が今年3月の12.45倍をピークに下落傾向です。

NT倍率の上昇場面は終焉を迎えたと考えている。TOPIXやJPX日経400の構成銘柄をバスケットにした売買が増えているからだ。これからはNT倍率が一段と低下するだろう。

日経平均とJPX日経400の構成銘柄のうち現在、152銘柄が重複。それを差し引いたJPX日経400の残り248銘柄を対象にバスケット運用すると、パフォーマンスは日経平均を超過。そこからさらに増益率の高い銘柄を選んで投資では、日経平均を年初から10%程度アウトパフォームしている。

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