アングル:訪日客促進、海外カード対応ATM導入のコストに悩む大手行

政府の「熱意」に押された格好で取り組みを「公約」したが

7月18日、外国人観光客が日本国内のATMからクレジットカードでお金を引き出せる──。こうした対応を可能にする検討が、メガバンク各行で始まっている。写真は17日、中国からの観光客。都内で撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 18日 ロイター] - 外国人観光客が日本国内の現金自動預け払い機(ATM)からクレジットカードでお金を引き出せる──。こうした対応を可能にする検討が、メガバンク各行で始まっている。

観光立国を目指す政府の「熱意」に押された格好で取り組みを「公約」したものの、採算が果たして取れるのか、各行の担当者は対応コストに頭を痛めている。
「これまで大きな負担になるので渋っていたが、東京オリンピックの招致が正式に決まって、これはもう対応せざるを得ないと思った」(メガバンク関係者)。観光産業は安倍晋三政権が掲げる成長戦略の柱の1つ。昨年の外国人観光客が初めて1000万人を突破し、政府は2020年に2000万人、2030 年に3000万人の目標を掲げている。

訪日観光客の拡大を推進する上で、外国人の決済利便性の向上は欠かせない。観光庁の調査では、外国人旅行者が感じる不平・不満のうち、クレジットカードの利用や両替に関連した内容が上位にランクインしている。

ゆうちょ銀やセブン銀など一部の銀行のATMは海外発行クレジットカードに対応しているが、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行のメガバンク3行は未対応だ。

昨年12月、観光庁はメガバンク3行が海外発行クレジットカード対応ATMの設置に取り組むと発表した。

ただ、海外発行クレジットカードを日本のATMで使えるようにするには、プログラムだけではなく、ATMの機器自体にも変更を加える必要があり、かなり大がかりな作業となるという。

たとえば、メガバンクなどのATMではタッチパネル上に表示される数字で暗証番号を打ち込むが、クレジットカード会社の規則に適合するためには、 ハードウエアのテンキーを備え付けることが必要になるという。「ただ、そのためだけに取り付けることを考えると、頭の痛い問題」と前出のメガバンク関係者 は語る。

実際のコストについては「いろいろなアプローチによって開発期間、コストも変わる。また、そもそもどこに何台設置するかによっても変わってくるため、まだわからない」という。

導入時のコストだけではなく、トラブル時のコールセンターでの対応も英語が必要となるなど、運営面でも負担が大きい。「費用対効果で考えると相当厳しい」(別のメガバンク関係者)との声が漏れる。

地元に観光地を抱える地方銀行にとっても、他人事ではない。海外観光客が多く訪れる日本有数の名所がある関東の地銀幹部は「うちにもやってくれときたら困る。正直、やりたくない」と打ち明ける。

そこで、コストと観光客の利便性から、あえて自行のATMにこだわらない銀行も出てきた。岐阜に本店を構える十六銀行は、昨年6月に地元観光地・飛騨高山の玄関口となるJR高山駅前の支店のキャッシュコーナーにセブン銀のATMを設置した。

「多くの外国人観光客が訪れる国際観光都市だが、現金を引き出せるキャッシュポイントは、必ずしも十分であるとは言えない状況だった」(経営企画部)という。自行ATMでの対応には多大なコストと開発期間が必要となるため、セブン銀のATM導入を決定したという。

セブン銀行では、2007年から海外カードに対応。海外カードによる利用件数は昨年1年間で240万件。セブン銀行の2万台近くあるATMの全取引 件数が1日200万件であることを踏まえるとほんの一部だが、東京・浅草の雷門前など、外国人観光客の多いところでは、1日に200件近い利用のある台も あるという。

メガバンクでは「そもそも他行のATMを使うという発想がない」(担当者)ことから、自行ATMでの対応で検討を進めている。

外国人観光客の利便性向上という目的を満たしながら、どのようにコストをうまく抑えていく方法があるのか、メガバンクはその難問に答えを出そうと苦悶(くもん)している。

(浦中大我 編集:田巻一彦)

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