焦点:株式の強気相場、終了宣言は時期尚早か

高リターンを求める世界全体の資金プールは広大で押し目買いの好機?

8月7日、世界的に株価が大幅反落する可能性におびえる投資家は、第2次世界大戦中に英政府が打ち出したスローガン「冷静に、戦い続けよ」をよりどころにしたいと思っているかもしれない。ニューヨーク証券取引所で7月撮影(2014年 ロイター/Brendan McDermid)

[ニューヨーク/ロンドン 7日 ロイター] - 世界的に株価が大幅反落する可能性におびえる投資家は、第2次世界大戦中に英政府が打ち出したスローガン「冷静に、戦い続けよ」をよりどころにしたいと思っているかもしれない。

実際にはさまざまなノイズがあるので、そうした行動を取るのは簡単ではない。地政学リスクの面では中東の紛争に加えて、ロシアによるウクライナ侵攻への懸念がある。さらに米連邦準備理事会(FRB)が来年、2006年以降で初めて利上げするとの観測が広がり、米国株が調整らしい調整もないまま上昇を続けていることなども不安の種になっている。

しかし米国や欧州の有力投資家やストラテジストの一部は、米国経済の成長が加速し、金利水準は数年先まで低いままだと予想され、欧米企業の第2・四半期決算が好調と見受けられる点を踏まえれば、極度に警戒する理由は乏しいと主張する。

米国債の利回り曲線といった警戒信号を発する伝統的指標でみても、株式市場は依然としてサポートされている。上場投資信託(ETF)を除くと、過去10週のうち8週で米株式ファンドから資金が流出しているという事実も、投資家心理が株価の大幅調整の予兆である楽観ムードにないことを示している。

ヘッジファンドのオメガ・アドバイザーズ(105億ドル)のスティーブン・アインホーン副会長は「この強気相場を支える基本要素が大きく崩れているとは思わない」と述べた。

ここ数週間の株式市場は、調整が起きるのではないかとの声が出ているにもかかわらず、パニック状態とは程遠い。特に欧州では軟調局面が見られるが、世界の平均株価の指標の1つをみると、直近の高値をつけた1カ月前から3.6%下げたにすぎない。

株式に対する明るい見方をもたらしているもう1つの大きな理由は、投資家が相応のリターンを求めようとする場合、株式の代わりになる存在が極めて少ないことだ。

<押し目買いの好機>

シティグループの特別損失を除外すれば、S&P総合500種企業は今年第2・四半期、約3年ぶりに2桁の増益率を記録しそうだ。

これは米10年債利回りが2.5%弱と、S&P銘柄の配当利回りの約2.35%よりかろうじて高い水準にすぎないのと見比べて、株式の妙味が大きいことを表している。またバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの債券指数データによると、米高利回り債(ジャンク債)は先月に0.5%ポイント程度上がって6.2%前後になったが、長期平均の9.45%前後を下回っている。

こうした中でRBSアメリカズのクロス資産戦略責任者、ジョン・ブリッグス氏は「株価が下押しする局面があれば、買い場となるだろう。個人投資家の一部の資金が市場から流出しているとはいえ、高リターンを求める世界全体の資金プールはあまりにも広大だ」と指摘した。

いつ調整があってもおかしくないとされる株式市場の1つにしばしば挙げられるのは米国で、S&P総合500種が少なくとも10%の下げを最後に記録したのはもう3年前になる。3─6%程度の「ミニ調整」はあったものの、いずれもすかさず買いが入った。足元の下落も同じような事例になっている。

21世紀フォックスによるタイム・ワーナー買収計画撤回やスプリントのTモバイルUS買収断念が表明された後の6日も、株価は小幅上昇した。

<ロシアの脅威>

恐らく株式市場の安定が最も脅かされるのは、ロシアが親ロシア系住民の保護を名目にウクライナに軍事侵攻した場合だろう。そうした事態が起きれば、紛争はずっと激化し、ロシアと欧米の間で貿易面などで制裁の応酬に発展するのはほぼ確実だ。

RBSアメリカズのブリッグス氏は、ウクライナとロシアが全面戦争へ突入すれば、米国株はおよそ10%の「反射的な」調整が発生し、欧州株はロシアとの地理的な近さやコモディティ供給への不安からさらに大きなマイナスの反応を見せる可能性があると予想する。

南欧では既に1カ月以上にわたって株価が下げ歩調をだとっている。ポルトガルのPSI20指数は6月半ば以降で25%下落し、同じ期間でイタリアのFTSE・MIB指数は13%、スペインのIBEX指数は9%それぞれ下げた。これはポルトガルのバンコ・エスピリト・サントをめぐる問題に起因する面もあった。

だがドイツのDAX指数ですら、6月終盤以降で9%下落。ウクライナ危機と対ロシア制裁がドイツ経済の成長を損なうのではないかとの懸念が響いている。

ブラウン・エディトレ(ミラノ)の市場アナリスト、リガルド・デジグノリ氏は「ウクライナ危機はなお欧州にとって深刻なリスクを生み出しており、特に個人投資家にとっては、織り込み済みになっているとは思わない。ドイツやイタリアなどはロシアの石油と天然ガスに依存している。冬が始まれば、危機が深刻な事態に高まる可能性がある」と話した。

<欧州にも楽観派>

一方でアジア株は今週、世界的な流れを受けてやや下押したが、他の地域に対してはアウトパフォームしている。企業利益が予想を上回っていることが支えになっている。

堅調地合いをもたらしている要因としては、モディ政権誕生に伴うインド市場への資金流入もあるものの、何といっても中国株の割安感と底を打ったように見える中国経済の魅力だろう。

香港上場の中国株は過去3カ月で13%上昇し、中国A株は同じ期間に10%近く上がった。

これに対して欧州は強弱材料が入り交じっているという様相がずっと濃い。トムソン・ロイターのデータストリームによると、第2・四半期決算シーズンの半ばまできて、STOXXヨーロッパ600銘柄の増益率は12%と2010年以来の伸びになっている。ただ、増益はコスト節減やリストラによる面が大きく、売上高は1.5%減った。

売上高が上向いていないことや、アナリストが業績予想を依然として下方修正している点は、懸念を生んでいる。

それでも米国と同様に、欧州の一部ファンドマネジャーも楽観論を維持している。

JPモルガン・アセットマネジメント(ロンドン)のベルトラン・ラストラ氏は「懸念を持っているかと聞かれれば、そうだ。市場が不安定になる局面では注意を払いたいと考える。しかし欧州の景気回復が軌道を外れ始めているかと問われるなら、わたしの答えは『明らかにそうではない』というものになる」と言い切った。

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