「中身」薄い日本株上昇、もろさに警戒感も

米利上げに一歩前進と評価した市場

8月25日、日本株は円安を好感して上昇しているが、その「中身」は薄い。写真は4月撮影(2014年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 25日 ロイター] - 日本株は円安を好感して上昇しているが、その「中身」は薄い。売買代金が少ないというだけではなく、実体経済の改善をともなわず、海外要因や需給要因を材料とした上昇であるためだ。

米経済の改善が、日本の輸出増につながりにくくなっているほか、行き過ぎた円安は日本経済にマイナスの影響をもたらすとの指摘も多い。もろさのある上昇相場だけに、警戒感も強まっている。

<米利上げに一歩前進と評価した市場>

中央銀行総裁や著名な学者、経済界の要人が集った米ジャクソンホール会議。終わってみれば、マーケットでは、やはり米金融政策だけは方向感が違うという評価になったようだ。

注目のイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の講演では、直近の米連邦公開市場委員会(FOMC)などと比べ、大きな変化はなかったが、米利上げに向けて一歩踏み出したとの評価も少なくない。

イエレン議長は、米労働市場には依然、多大なスラック(緩み)が存在するとしながらも、労働市場は見かけよりもひっ迫している可能性があり、FRBが早めに利上げに踏み切ることもあり得ると示唆した。

「FOMC内のタカ派に配慮したかのような内容だった。今後の政策はデータ次第の可能性があると明確に示唆している。緩和一辺倒のこれまでとは違う。米利上げに向けて一歩踏み出したとみるべきだろう」と、三菱東京UFJ銀行・シニアマーケットエコノミスト、鈴木敏之氏は指摘する。

一方、英国や欧州の中央銀行当局者がそれぞれ、自国や地域の景気回復ペースが予想よりも緩慢だと説明。日銀に関しては「黒田総裁の講演内容は、金融緩和長期化の思惑を強めそうだ」(大手証券)との声も市場では出ている。

<円売り/株買いのファンド勢見えず>

日本や欧州は緩和継続の見方が強まる一方、米金融政策はやはり利上げに向かっているとの認識は、為替市場を中心に広がり、ドル/円は週明け25日早朝に、一時104.49円まで上昇し、7カ月ぶりの高値を付けた。ドルインデックスも2013年9月の水準まで上昇、ドル全面高の様相だ。

さずがに22日の米ダウ<.DJI>は米利上げ観測を嫌気して下落したが、下げ幅は38ドル止まり。「欧州や新興国など景気に不安がある中、米資産市場にマネーが集中している。米利上げ観測が強まっても、米株はそれほど下げないかもしれない」(りそな銀行・総合資金部チーフストラテジストの高梨彰氏)という。

米利上げ観測を背景に円安が進む一方、米株の下落は限定的。日本株には理想的な展開だったが、週明けの日経平均<.N225>は74円高と円安進行の割には伸び悩んだ。

前週の9連騰の余韻が残っており、利益確定売りが出やすいとはいえ、東証1部売買代金は1兆4103億円と薄商い。出来高は15億6383万株と今年3番目の少なさだった。売買が交錯するような展開ではなく、盛り上がりは乏しい。「円安と日本株を組み合わせて取引するようなヘッジファンドの動きは見えない」(邦銀)という。

<ファンダメンタルズ改善の期待薄>

日本株の伸びが弱いのは、これまで需給材料で押し上げられてきた影響が出ていることも一因だ。足元の日本株の買い材料は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)など(準)公的資金の基本ポートフォリオ見直し期待などが中心。消費増税の影響が読めず、ファンダメンタルズの改善には期待が集まりにくい。

「日本株は需給材料でだいぶ押し上げられてしまった。多少、ファンダメンタルズが改善しそうだとの材料程度では、上値は追いにくい。個人的には日本株は高過ぎるとみている」と三井住友アセットマネジメントのシニアストラテジスト、濱崎優氏は話す。

一方、米経済の改善は、これまでのように日本に恩恵をもたらさない可能性もある。 シェールガス革命が進む米国では、輸入が伸びない状況が続いている。6月の輸入は1年ぶりの減少幅となった。エネルギー輸入の減少だけでなく、コストが低くなったことで、製造業が米国内に回帰。生産の一部が海外勢から米国製にシフトし、モノの輸入も減少しているためだ。

現地生産が拡大していることも日本の輸出が低迷している要因だが、連結ベースの企業業績は伸びても国内雇用には結び付かない。内需は消費増税の悪影響がじわりと広がっている。円安は国内輸出企業にとっては増益要因だが、貿易赤字国と化した日本にとっては、行き過ぎた円安はダメージの方が大きくなる。

成長戦略などファンダメンタルズの改善期待は後退。地政学リスクも依然くすぶっている。海外要因や需給要因を材料とした薄商いの中での株価上昇には、危うさもつきまとう。

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