原油安は円安デメリット軽減の「救世主」、世界景気低迷には警戒

原油10ドル下落でGDPを0.4%程度押し上げる

9月12日、一段の円安による日本経済へのデメリットが懸念されているが、足元で進む原油安がショックを軽減する「緩衝剤」として機能してくれそうだ。トロントで4月撮影(2014年 ロイター/Mark Blinch)

[東京 12日 ロイター] - 一段の円安による日本経済へのデメリットが懸念されているが、足元で進む原油安がショックを軽減する「緩衝剤」として機能してくれそうだ。輸入コスト増を抑制し、貿易赤字の拡大テンポを緩和させる。物価上昇が進まなければ、日銀の追加緩和期待も高まる。ただ、原油安の背景は世界需要の低迷だ。輸出の伸びが阻害され、日本経済の回復の重しになるという側面もある。

<原油10ドル下落でGDP0.4%上昇>

米原油先物10月限は、11日早朝の時間外取引で一時、1バレル90.43ドルと2013年5月以来、約1年4カ月ぶりの安値を付けた。売り一巡後は買い戻しなどで92ドル台まで戻しているが、6月に付けた107ドル台から下落トレンドに入り、約14%の下落となっている。

ドル/円が107円台と約6年ぶりの円安水準になったことで、円安による輸入価格上昇など日本経済へのデメリットを懸念する声も出てきている。ただ、原油価格が足元で下落していることで、円安の悪影響をある程度、和らげてくれるとの期待も高まってきた。

日本の2013年の輸入額は81.2兆円。そのうち約3分の1にあたる27.4兆円が原油を含む鉱物性燃料。実は原油及び粗油の輸入数量は昨年、前年比0.6%減と減っている。価格が同16.3%と大きく上昇した結果、輸入の金額が増えている構図だ。原油価格が下落すれば、輸入額全体も押さえられる可能性がある。

日本総研・調査部副主任研究員の藤山光雄氏の試算によると、原油価格が10ドル/バレル下落すると、原油・LNG輸入額が約2兆円減少する。貿易収支の改善は国内総生産(GDP)の押し上げ要因であり、2兆円の改善はGDPを0.4%程度押し上げる規模だ。

さらに原油安は株式市場などにとって、大きなプラス材料となる。円安が物価上昇につながるルートの1つは輸入価格の上昇だが、原油価格の下落で物価が日銀の想定通りに上昇しなければ、追加金融緩和の期待も高まる。

エネルギーや輸入品のコストが抑えられれば、企業業績や消費にもプラスだ。世界経済における石油依存度は低下したが、依然として多くの製品は石油から作られるため、波及効果は小さくない。

<「驚くほど」の需要鈍化>

しかし、原油安を手放しでは歓迎しにくい。原油安の大きな背景は世界需要の低迷であるためだ。原油安が進んだ11日の米株式市場では、国際エネルギー機関(IEA)が2015年の石油需要予想を下方修正したことが売り材料視された。

IEAは11日に発表した月報の中で、2014年の世界石油需要の伸び見通しを日量90万バレルとし、従来予想を15万バレル下方修正。欧州と中国の景気減速を背景に、世界の石油需要の伸びは「驚くほどの」ペースで鈍化しているとの認識を示した。

原油価格の低下の背景が世界景気の停滞を反映した石油需要の低迷であるならば、日本からの輸出はますます鈍化するおそれがある。輸入コスト増加は抑えられても、円安のメリット効果も働きにくくなり、企業業績の改善期待も後退する。

また、原油価格後が今後、1バレル90ドルを割り込んで下落するという見方は少ない。「原油の競合商品である米シェールガスの採算レートは85ドル程度。原油価格が90ドルを大きく割り込むことはなさそうだ」(ばんせい投信投資顧問・商品運用部ファンドマネージャーの山岡浩孝氏)とみられている。

原油価格が下げ止まる一方で、円安がさらに進めば、トータルでデメリットの方が大きくなる可能性がある。株高・円安基調は続いているものの、その手掛かりは1)来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文のタカ派的な方向への変更、2)日銀の追加緩和期待、3)公的資金のリスク資産購入──など、あくまで期待先行の材料だ。ファンダメンタルズの後押しはまだ乏しく、期待の反動が起きる可能性も高まっている。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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